沖縄集団自決、軍関与認めた判決確定 大江さん側勝訴
2011年4月22日 日本経済新聞
太平洋戦争末期の沖縄戦で、住民の集団自決を命じたなどとする記述で名誉を傷つけられたとして、旧日本軍の当時の隊長らが岩波書店と作家の大江健三郎さん(76)に著書「沖縄ノート」の出版差し止めや損害賠償などを求めた訴訟の上告審で、最高裁第1小法廷(白木勇裁判長)は22日までに、原告側の上告を退ける決定をした。大江さん側勝訴が確定した。
同小法廷は「上告できる理由に当たらない」と判断した。
2008年3月の一審・大阪地裁判決は、集団自決が起きたすべての場所に日本軍が駐屯し、駐屯していなかった島では集団自決が起きなかったことなどから「集団自決に日本軍が深く関わった」と判断。記述は「合理的根拠があり、真実と信じる相当の理由があった」として大江さん側勝訴を言い渡した。
同年10月の二審・大阪高裁判決も、直接の命令があったとは断定できないとしたうえで、沖縄ノートの出版当時、命令があったとの学説が通説だったことなどから「軍が深く関わったことは否定できず、総体としての軍の強制、命令と評価する見解もあり得る」と指摘。一審を支持して原告側控訴を棄却していた。
沖縄戦の集団自決を巡っては、文部科学省が06年度の教科書検定で、自決命令の記述を削除させた。同省は削除の理由を「軍命令の有無を巡る裁判が起きるなど、強制の事実が必ずしも明らかでない」と説明、今回の訴訟を根拠の一つに挙げていた。