私は原発再稼働・ 新増設に反対します。 脱原発へ12人の声

私は原発再稼働・
新増設に反対します。
脱原発へ12人の声

 

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人間に放射能を消す力はない。これ以上、水の惑星を放射能で汚してはいけません。

 決して起きないはずだった原子力発電所で大きな事故が起き、大量の放射性物質が噴き出して東北、関東に降り注ぎました。広大な地域を放射線管理区域にし、住民を避難させなければならないほど汚しました。政府は「原子力緊急事態宣言」を発令し、被曝限度の基準を一気に20倍も緩和し、1年間で20ミリシーベルトまで人が住んでいいことにしてしまいました。そして12年経った今も緊急事態宣言は解除できないままです。
 岸田政権は、原発の60年超の長期運転を認めました。
 原子炉は運転中、中性子線でずっと被曝し、劣化していきます。脆くなった金属が壊れるのを事前に予測することは難しい。原子炉だけでなく、配管、電気ケーブル、計測制御系などあらゆる機械が経年劣化します。政府は点検するから大丈夫と言っていますが、点検していなかったため起きた事故は山ほどあります。関西電力美浜原発では2004年、太いパイプが減肉(金属の厚みが減少すること)して熱湯が噴き出し、死者5人、重傷者6人という事故がありました。問題の箇所は1976年の運転開始から一度も点検されていなかった。関電は「点検リストから欠落していた」と釈明しましたが、原発はそんなことを言ってはいけない機械です。
 原発回帰を決めた新政策の中で、政府はコアキャッチャーと呼ばれる「炉心溶融物保持装置」を取り付けたものを「次世代革新炉」として新設すると言っています。しかし、これはすでにEPR(欧州加圧水型炉)として欧州で使われているものと同じ。しかも、経済性がなく、ほとんど動いていません。

福島第一原発の敷地内に並ぶ処理水の保管タンク。政府は2023年春から夏ごろに汚染水を海洋放出する方針を示している(写真提供/共同通信社)。

 人間に放射能を消す力はないのです。なるべく長い間閉じ込め、自然に減っていくのを待つしかない。国と東京電力は、福島第一原発に貯まり続けている汚染水を今年から放出するとしていますが、汚染水は130万トンもあり、日々増え続けています。 被曝は必ず実害を伴います。安全な被曝なんてないのです。放射能を海に流してはいけません。大型タンクを設置する、モルタルで固化するなど、現実的で容易に実行できる方策はさまざまにあります。それを実行して時間を稼ぐ。それが一番大切です。
 地球は水の惑星。その水を放射能で汚すことは究極の環境汚染です。


こいで・ひろあき●1949年、東京都生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業、同大学院修了。京都大学原子炉実験所助教として、原子力利用の危険性について研究し、追究し続けてきた熊取六人組の一人。2015年に定年退職。『原発のウソ』(扶桑社)、『原発事故は終わっていない』(毎日新聞出版)、『日本のエネルギー、これからどうすればいいの?』(平凡社)など著書多数。