迷走プルトニウム/4 不良品、核燃サイクルに影響 2023/1/12  毎日新聞

迷走プルトニウム/4 不良品、核燃サイクルに影響

2023/1/12  毎日新聞

 

 ●日本でも保管に苦慮

 たまり続ける使用済み核燃料。保管場所の問題は日本でも大きな問題だ。とりわけ保管が難題なのが、プルサーマルを実施した後に残る使用済みMOX燃料だ。

 使用済みウラン燃料とは違って厄介な物質が多く含まれている。厄介というのは、多量のプルトニウムを燃やすと、中性子を吸収するなどして別の放射性物質が生まれ、長期間にわたり高温を発し続けるからだ。多くはウランよりも重い元素で、放射性物質研究の先駆者のキュリー夫妻にちなんで名付けられたキュリウム242やアメリシウム241などがある。

 使用済みのウラン燃料も、使用済みMOX燃料より少ないものの、厄介な放射性物質が生じていて熱を発しており、通常は10年ほどプールで冷やしている。では、使用済みMOX燃料は何年プールで冷やす必要があるのか。

 

 ●冷却期間が6~9倍に

 これまでの使用済み核燃料の研究資料を検討した長沢啓行・大阪府立大名誉教授は「使用済みMOX燃料は、使用済みウラン燃料よりも6~9倍長くプールで冷やす必要があることが分かる」と指摘している。使用済みMOX燃料は100年冷却する必要があるとする文献もある。

 プールで冷却する期間が長いということは、それだけ原発の敷地内に置かれる期間が長いことを意味する。

 これに対して、関西電力は「使用済みMOX燃料を輸送容器(キャスク)に収納する数を減らすなどして対応すれば、ウラン燃料と同じ発熱量まで冷却しなくても搬出することは可能」と説明している。

 それでも、記者が「使用済みウラン燃料を10年冷やしたときと同じ発熱量にするために使用済みMOX燃料をどれくらい冷やす必要があるか」と質問すると、関電の担当者は「代表的な例で見れば数倍の期間を要する」と認めた。

 使用済みMOX燃料の長期冷却は、ただでさえ課題山積の原発のごみ問題をより複雑にする。

 福井県は、使用済み核燃料の移送先「中間貯蔵施設」の候補地を県外で見つけるよう、県内3カ所に原発を持つ関電に求めている。関電はなかなか求めに応じられず、候補地を23年中に示すと約束。果たせなければ、運転開始から40年を超えている美浜原発3号機、高浜原発1、2号機を動かさないと退路を断って候補地を探している。22年6月28日に就任した関電の森望社長は毎日新聞の取材に対し「もうやるしかありません。私の最大の責務」と答えたが、難航しているとみられる。

 使用済み核燃料の県外搬出の原則は、使用済みMOX燃料が次々と生み出されることでいっそう達成のハードルが高くならないか。

 プルサーマルを実施している高浜原発3、4号機が立地する福井県高浜町の担当者は「使用済みMOX燃料はすべて再処理する計画になっている」との前提に立った上で、「受け入れ先が決まるまでは国、県の監視のもと貯蔵する。当面、発電所内で貯蔵することになるが、一定期間冷却した後は安全に搬出できる」と静観する。

 これに対し、高浜原発から4キロに住み原発に批判的な立場の「ふるさとを守る高浜・おおいの会」代表、東山幸弘さん(76)は「プルサーマル後に燃料がどうなるかは町内でほとんど説明されていない。使用済みMOX燃料が簡単に動かせないと私が知ったのはつい最近のこと。一時保管のはずが、高浜から出せなくなるのではないか。原発の事故や故障が起きなくても、問題が多いプルサーマルはやめてほしい」と話した。