再エネ、危機下で急浸透 「自国産」で安保価値向上

再エネ、危機下で急浸透 「自国産」で安保価値向上
第4の革命・カーボンゼロ 試練の先に(上)

2022/11/28 日本経済新聞

 

ロシアのウクライナ侵攻で世界のエネルギー環境が大きくかわった2022年。エネルギー安全保障の重要性が再認識される一方で、異常気象が相次ぎ、気候変動対策を急ぐ必要も高まっている。世界は試練の先を見据え、エネルギーの安定供給と脱炭素の両輪を加速させている。

ウクライナ侵攻以降、光熱費が2倍になり、閉店が迫られるパブが相次ぐ英国。電気代高騰の負担を抑えようと自宅の屋根に太陽光パネルを設置する家庭が急増している。業界団体のソーラーエナジーUKによると住宅の屋根に取り付けられた容量は1~6月だけで16万4000キロワット。既に昨年1年間分を超えた。

国際エネルギー機関(IEA)は10月、22年の世界の二酸化炭素(CO2)排出量が前年比で1%弱の増加になる見通しだと公表した。まだ増えているが、4%増えた21年に比べれば鈍化した。

再生可能エネルギーの普及の加速が一因だ。IEAは10月、22年の再生エネ発電容量の伸び率の予測を5月時点の前年比8%から20%に引き上げた。現状の政策を進めるだけでも、世界全体の発電量は30年に21年のざっと2倍になる。米中は2倍前後、インドは3倍近くになるという。

「輸入頼み」に転機

ロシアのウクライナ侵攻に端を発するエネルギー危機は、化石燃料の輸入に頼る国々を右往左往させた。自らのエネルギー構造を見直すきっかけになった。

「気候変動ではなく、エネ安保が各国をクリーンエネルギーにシフトさせている」。IEAのビロル事務局長はこう分析する。再生エネは自国領内に吹く風や、降り注ぐ太陽で電気をつくることができ、自国産エネルギーになる。

欧州連合EU)の環境政策担当のシンケビチュウス欧州委員も日本経済新聞の取材に再生エネへの移行は「安全保障への戦略的投資にもなっている」と話す。

資源高で相対的に再生エネのコストが下がったことも大きい。欧州の天然ガスは22年に前年の一時20倍以上の価格をつけ、石炭も過去最高値を記録した。国際再生可能エネルギー機関(IRENA)は「化石燃料の競争力が大幅に低下し、太陽光や風力が魅力的になった」と指摘する。

シンクタンクのエンバーによると、22年1~6月の風力と太陽光の伸びにより、世界では2億3000万トンのCO2の排出が回避されたという。中国では前年から増えた電力需要分の92%を風力と太陽光でまかない、米国でもその割合は81%に上った。