過去に目を閉ざす者     前川喜平

過去に目を閉ざす者     前川喜平

2022/9/4 東京新聞

 


 在日コリアンの人たちが多く暮らす京都府宇治市ウトロ地区の家屋に放火した有本被告に対し8月30日、京都地裁が求刑どおり懲役四年の実刑判決を言い渡した。
 判決が犯人の動機を「在日韓国・朝鮮人という特定の出自を持つ人々への偏見や嫌悪感」としたことを評価する声がある一方、「差別に基づく犯行という意味づけがなされていない」との批判もあるという。
 本紙 森田真奈子記者との面会や手紙で、有本は東日本大震災で「韓国が地震を天罰として称賛した」という情報に触れて「敵対感情」を持つようになり、「在日特権がある人は、医療や教育、就労の保障も受けられる」「植民地支配という捏造、慰安婦の嘘。韓国人の被害」妄想で日本は不当な賠償を払った」などと主張していた。ネットに溢れるデマが差別感情を増幅させ犯罪へ駆り立てた。本当の原因は日本の社会に根深く巣食う差別だ。
 しかし日本の政治は差別に立ち向かわず、差別を容認し、時に利用さえする。デマに煽られた差別が虐殺にまで至った関す東大震災から99年。
 小池都知事は今年も朝鮮人犠牲者追悼式典への追悼文を送らなかった。こんな政治家が権力を握っている限り差別はなくならない。小池氏には「過去に目を閉ざす者は現在も見えなくなる」というワイツゼッカーの言葉を贈ろう。(現代教育行政研究会代表)