「民主主義よりコンチクショウ」の覚悟 密約事件、半世紀の宿題

「民主主義よりコンチクショウ」の覚悟 密約事件、半世紀の宿題

2022/5/14 朝日新聞

 

 半世紀前の1972年5月15日、アメリカの施政権下にあった沖縄が日本に復帰した。その約1カ月前、一人の新聞記者が逮捕された。外務省の機密電信文を女性事務官から入手したことが、「秘密をもらすようそそのかす罪」(国家公務員法違反)に問われた。電信文は、沖縄返還をめぐる密約をうかがわせるものだった。逮捕について、国民の「知る権利」を阻むものとの反発が広がった。だが、記者が男女関係を通じて機密を手に入れたとわかると、風向きは一変した。メディアの追及は鈍り、記者と事務官はいずれも有罪となった。ジャーナリズム史に残る事件から25年あまりして、密約を裏づける米公文書が見つかった。その後、当時の外務省高官が証言し、司法も密約と認定した。にもかかわらず、国は半世紀たったいまも認めていない。一方、かつて密約に迫った記者は新聞社を去り、90歳になった。国の噓(うそ)を許しているのは、メディアの責任ではないか。世紀をまたいで積み残された「メディアの宿題」をたどる。(諸永裕司)