<検証 泊停止10年>②全国一高い料金 動かぬ原発に巨費投入 2022/05/03 北海道新聞

<検証 泊停止10年>②全国一高い料金 動かぬ原発に巨費投入
2022/05/03 北海道新聞

 

全国一高い水準―。北海道電力の電気料金を表す際によく使われる言葉だ。

 2012年5月5日に泊原発(後志管内泊村)全3基が停止し、その穴を埋めるべく火力発電所稼働率を高めた結果、燃料費が膨張。13、14年に計2回の大幅値上げに踏み切った影響が今も続いている。

 北電の電気料金は、標準世帯(30アンペア、月230キロワット時使用)の6月検針分が1キロワット時換算で36円80銭。原油や石炭の高騰、再生可能エネルギーの導入促進を支える賦課金の単価上昇といった要因も重なり、年間の電気代は単純計算で10万円を超える。東京電力は1キロワット時32円94銭。関西電力は28円83銭。最も安い北陸電力は27円73銭で、大手電力では北電の高さが突出している。

■大手電力で突出

 ただこれは国の認可が必要な規制料金。16年4月の電力小売り全面自由化で、家庭向け料金でも事業者の裁量で価格を設定できる自由料金が登場し、北電は「経済的なプランもある」と主張する。代表的なメニュー「エネとくポイントプラン」は、規制料金の標準メニューと比べ、ポイント付与などを含め「年間3千円お得」とPRしている。

 それでも電気料金全体の平均単価は20年度、沖縄電力を除く道外大手がいずれも1キロワット時10円台後半だったのに対し、北電は最も高い21円88銭。全国一との「汚名」は免れようがない。

 家庭向け販売電力量に占める自由料金の割合も、北電は今年1月時点で49・5%と、北陸電の74・2%などと比べると見劣りする。

 冬の暖房は灯油という家庭が多く、夏も本州より冷涼で電力使用量が少ないため、安い自由料金に切り替える動機付けが弱いことが一因とみられるが、東大社会科学研究所の松村敏弘教授(公共経済学)は「北海道は新電力に流れる割合が一定程度ある」と北電離れも指摘する。実際、北海道ガスの電力契約は3月末時点で21万件に迫っている。

 高止まりする電気料金の値下げについて、北電は泊原発の再稼働を前提とする。省エネや再エネでも埋めきれない「泊の穴」を火発に依存する現状から脱却し、発電コストを下げられる―との理屈だが、原発には原発特有のコストがある。

 泊原発では今、ショベルカーやダンプカーがしきりに行き交い、防潮堤を取り壊している。北電が津波対策として14年に自主的に設置したが、地震による液状化で沈下や破損する恐れが明らかになり、撤去を余儀なくされたからだ。今年3月に工事を始め、海抜16・5メートル、全長1200メートルの新しい防潮堤に造り替える。

■道民につけ回し

 北電は新旧防潮堤の建設費を公表していないが、道内の複数の建設業者などによると、それぞれ数百億円台に上るのは確実という。非常用電源の屋外配備などにかかる安全対策費は総額2千億円台半ばとしてきたが、新旧防潮堤の建設費や旧防潮堤の撤去費は含まれていない。

 このほか、再稼働にはテロ対策用の緊急時制御室など「特定重大事故等対処施設」(特重施設)の設置が義務付けられており、工事費はさらに膨れ上がる。

 維持管理費もある。有価証券報告書によると、12~20年度は原子力発電費として計6170億円を計上。発電を止めている施設に平均で年間700億円近くを投じている。全基停止中も核燃料を調達しており、その額は年間100億~200億円程度とされる。

 これらの費用は、広く薄く、電気料金として道民につけ回しされる。藤井裕社長は4月28日の記者会見で、再稼働後の値下げ幅について「定量的なことは申し上げられない」と語ったが、ある幹部はこう漏らす。「再稼働しても元の水準まで値下げするのは難しいだろう」(田中雅久)