今後数十年の利益と、10万年という想像を絶する負担が、てんびんに掛けられている

<75歳の憲法 次世代の視点から>(中)核ごみ問う 未来への責任  

2022/05/02  北海道新聞


「Z世代」と呼ばれる10~20代が、世界各国で未来のための環境対策を求める声を上げている。年々深刻化する気候変動を目の当たりにする、この世代の環境問題への関心は高い。


■無害化10万年後
青く澄んだ日本海に面した後志管内寿都町。2年前の秋、全国の原子力発電所から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定に向けた文献調査が町内で始まった。無害化まで約10万年かかる核のごみ。調査の是非を巡り、地域は割れた。
「ずっとこの環境を維持していけるだろうか」。揺れる地元を見つめてきた西村弥呂斗(ひろと)さん(19)は不安を抱く。平日は小樽に住んで専門学校に通い、週末は寿都の実家で過ごす。将来も近郊で働くつもりだ。
だが、心は揺れる。町の人口は過去20年で3割減った。同学年は高校卒業を機にほぼ全員が町を離れた。「この町を残すためには核ごみの交付金に頼らざるを得ないのか」。将来を真剣に考えると、簡単に反対とは言えない。ただ、国に対する気持ちははっきりしている。「こんな小さな町に抱えさせる問題じゃない」
本来は国策であるはずの最終処分場建設。巨額の交付金を誘い水に、衰退した市町村が「主体的」に受け入れたかのように仕向ける手法がまかり通る。それは許されるのか。


元裁判官の樋口英明さん(69)は「今後数十年の利益と、10万年という想像を絶する負担が、てんびんに掛けられている」と指摘する。福井地裁裁判長だった2014年、関西電力大飯原発福井県)の運転差し止めを言い渡した。判決では生命を守り生活を維持する「人格権」を最高の価値と強調。原発の耐震性を理由に、運転によって人格権が侵害される具体的危険があると認めた。
憲法13条の幸福追求権などに基づく人格権。将来世代に影響を及ぼす核ごみも人格権に根差す問題だと、樋口さんは考える。現行憲法は今を生きる世代と、これから生まれてくる世代の間の平等は保障していない。だが、「私たちには『命をつなぐ権利』がある。10万年もの負担を後世に押しつけたくないと願い、持続可能な社会を継承していくことは幸福追求の中核だ」。
ドイツは1994年の憲法改正で「国は、将来の世代に対する責任を果たすためにも(中略)自然的な生活基盤を保持する」と明記し、次世代への責任に言及。2022年末までの「原発ゼロ」を掲げ、段階的に運転停止が進む。


■変革へ動く若者
動き出す若者は確実に増えている。札幌市内に住む藤女子大2年の松本和伽南(わかな)さん(19)は昨年春から、気候変動対策を求める世界的な草の根運動フライデーズ・フォー・フューチャー」に参加。原発にも関心を持ち、4月初旬、市内で核ごみ問題を考えるイベントに足を運んだ。
放射線のリスクを伴いながら暮らすことが、本当に次の世代を考えた選択なのか。今の利益に目を向けて将来を考えない社会が変わらない限り、同じことが起き続ける」。最近、まずは若い世代が声を上げやすい環境をつくりたいと、全国の若者とグループをつくった。今後、政治家にも直接会い、変革を働き掛けていきたいと考えている。「自分さえ、今さえ良ければいいというのはおかしい」