元総理大臣5名が欧州委員会に対して書簡を発出した内容への福島県知事申し入れに対する抗議文

14日、元総理大臣5名が欧州委員会に対して書簡を発出した内容への福島県知事申し入れに対する抗議文を提出しました。抗議文は以下の通り。


2022年 2月14日   福島県知事 内堀 雅雄 様
社民党福島県連合
代 表 狩野 光昭 


元総理大臣5名が欧州委員会に対して書簡を発出した内容への福島県知事申し入れに対する抗議文 


東日本大震災東京電力福島第一原発事故以降、福島県の復興に尽力しておられる福島県に対して心から敬意を表します。
さて、元総理大臣の5氏(小泉純一郎細川護熙菅直人鳩山由紀夫村山富市)は、欧州委員会が、気候変動対策などへの投資促進のための「EUタクソノミー」に原発も含めようとしていると知り、2022年1月27日、欧州委員会委員長あてに、「脱原発・脱炭素は可能です―EUタクソノミーから原発の除外を―」と題する書簡を送りました。
 この書簡では、「福島第一原発の事故は、・・・原発が『安全』ではありえないということを、膨大な犠牲の上に証明しました」「この過ちをヨーロッパの皆さんに繰り返して欲しくありません」と切り出し、「原発推進は、気候変動から目を背けるのと同様に、未来の世代の生存と存続を脅かす亡国の政策です」「私たちは真に持続可能な世界を実現するためには脱原発と脱炭素を同時に進める自然エネルギーの推進しかないと確信します」と訴えています。
 そして、「EUタクソノミーに原発が含められることは、処分不能放射性廃棄物と不可避な重大事故によって地球環境と人類の生存を脅かす原発を、あたかも『持続可能な社会』を作るもののごとく世界に喧伝するものです」として、「ヨーロッパの皆さんが人類の持続可能な未来を紡ぐ決断をなされんことを切に願います」と結んでいます(詳細は、別紙を参照ください)。
この書簡のなかに、「福島で多くの子供たちが甲状腺がんに苦しみ」との文言があったことに対して、マスコミは、「内堀雅雄知事は3日、『あたかも事実、確定したものであるかのように受け取られかねず、遺憾』と述べた。…5氏には、『科学的知見に基づき、客観的な発信』をするよう申し入れた」と報じました(「朝日新聞(福島版)」2022年2月4日)。
しかし、知事の遺憾表明・申し入れは、県民の心情を代弁したものとは思われません。
そもそも、福島県復興計画(第1次)(2011年12月)には、その基本理念の第一に、「原子力に依存しない、安全・安心で持続的に発展可能な社会づくり( ※国・原子力発電事業者に対して、県内の原子力発電所の全基廃炉を求める)」が、さらに、福島県再生可能エネルギー推進ビジョン(改訂版)( 2012年3月)には、その目標として、「2040年頃を目途に、県内のエネルギー需要量の 100%以上に相当する量のエネルギーを再生可能 エネルギーで生み出す県を目指します」が掲げられてきたのです。
これは、原発被害に苦しんだ県民の「福島県原発はいらない」「県内全基廃炉を」の強い思いをしっかりと受け止めたものでした。この強い思いがあって、東京電力は、2019年7月には、福島第二原子力発電所廃炉を正式決定するにいたったのです。
 このような経過を踏まえ、この件に関して、知事がなすべきことは何か、元総理大臣5名が発信した書簡の本旨は何かを考えると、共通点があることが分かります。書簡は、原発推進を選択する委員会に異議を申し入れたもので、甲状腺の科学的知見を問うものではありません。その本旨を正しく理解するならば、知事は賛意を示してしかるべきです。
そのうえで、今回の知事の遺憾表明・申し入れは、現在甲状腺がんまたはがんの疑いに苦しんでいる266名と原発事故による被災者はじめ、健康を害している人、あるいは亡くなった方々に対し、「自己責任」を押しつけるようなものではないかとも思います。
甲状腺問題に関しては、専門家からなる「県民健康調査検討委員会」「甲状腺評価部会」において「総合的に判断して、放射線の影響とは考えにくい」と評価されたとありますが、専門家会議でも「結論付けるには時期早々」「被ばく影響の可能性も考慮」も、と見解が分かれる中、知事は「被ばくの影響とは考えにくい」などと結論付けるような発言をされるのであれば、これでは、県民の拠るべき処がなくなります。
 また、県民健康調査検討委員会は「甲状腺がん放射線被ばくの関連は認められない」などとする見解を示していますが、この見解は、現状では根拠のあるものとは言い切れないものがあります。少なくとも甲状腺がんについては、甲状腺が受けた放射線量(外部および内部)についての調査が全く不充分であるからです。
昨年の5月に開催された第41回県民健康調査検討委員会で発表された報告書では県民行動調査で回収された30%弱のデータから外部被ばく量を推定したものを基礎資料として、甲状腺がんにとってもっとも重要な内部被ばく(甲状腺への放射能取り込み)については調査しないし今後も調査する考えはないという態度です。
先の、長崎・広島の被ばく者の裁判では外部被ばく、内部被ばくにかかわらず、被ばくを受けたと推定される被災者を広く認定する判決が出ました。科学的に因果関係が明確にならずとも被ばく被害を認めるのが妥当という判断です。
 福島の悲劇を二度と繰り返すべきではなく、知事は、避難生活に疲れ、病に苦しむ被災者の代表として支援しなければならないと考えています。
よって、今回の知事申し入れに対して強く抗議をするとともに、県が福島県民のいのちと健康・生活を守るために県民に寄り添い全力で取り組まれることを切に望むものです。
以上