対馬 核ごみ処分場誘致再燃 過疎地の振興策充実が先

対馬 核ごみ処分場誘致再燃 過疎地の振興策充実が先 東京報道センター・佐々木馨斗:北海道新聞 2021/12/19

 

 国と原子力発電環境整備機構(NUMO)が、高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場に関する説明会を離島として初めて長崎県対馬市で開くと聞き、11月下旬に現地を訪れ取材した。そこで知ったのは、産業が衰退し処分場誘致の機運が高まる島の窮状と、住民による処分場の選定調査受け入れの機会をうかがうNUMOの姿だった。国の振興策がうまくいかず深刻な過疎に陥った離島で、核のごみを処分してよいのか。国は地域の活性化を優先すべきではないか。
 対馬では4日間で約30人の島民に話を聞いた。驚いたのは、「地層処分」「NUMO」といった、一般の人になじみの薄い核のごみ用語が広く浸透していたことだ。処分場誘致に積極的な市議だけでなく、居酒屋の店主や旅館のおかみ、道で出会ったお年寄りまでよく知っていた。
 地元関係者たちがその理由を説明してくれた。対馬では14年以上前にも処分場誘致の動きが浮上。NUMOは当時、島民を対象に、青森県六ケ所村の核燃料関連施設を視察する1泊2日のツアーを繰り返し行った。参加した50代の男性は「参加費はほぼNUMOが出し、自分の負担は1万円で済んだ」と振り返る。
 交通費だけでも10万円以上かかる距離だ。電力関係者によると参加者は千人以上。処分場建設に向けたNUMOの熱意がうかがえる。衰退が激しい地区を中心に参加を呼びかけ、「視察を機に誘致に賛成するようになった島民もいる」(関係者)という。
 ただ、1次産業や観光業への風評被害の懸念などから、対馬市議会は2007年、誘致反対の決議を可決。11年の東京電力福島第1原発事故もあり、誘致運動は下火になった。それから10年がたち機運が再燃。説明会や勉強会などのため、NUMOの職員も頻繁に対馬に入っている。
 背景には、地域の衰退が一層進んだことがある。九州より近い韓国からの観光客は18年に年間41万人が訪れたが、日韓関係の悪化などで昨春からゼロに。基幹の水産業地球温暖化による不漁などで低迷した。若者は次々と島を離れ、人口は2万9千人と07年より1万人減。1960年の7万人からは6割も減った。
 国は、離島の活性化のため53年に成立した離島振興法を基に、インフラ整備を中心に支援してきたが、対馬の人口減は止まらなかった。同法を所管する国土交通省の担当者は「日本全体の人口減が進む中、離島人口の現状維持は厳しい」と諦めムードだ。
 対馬の現状は、処分場選定に向けた文献調査が進む後志管内寿都町神恵内村と共通点が多い。両町村は離島ではないが、水産業などが衰退し人口減が止まらない自治体だ。地域の地盤沈下に歯止めをかけるため、調査に伴い国から支給される巨額の交付金などに頼らざるを得なくなっている点も似ている。
 問題は、交付金と引き換えに、衰退した地方に処分場を押しつけようとするやり方だ。NUMOは、交付金などを活用した「地域発展ビジョン」を住民と議論するとしている。だが、離島振興の交付金でも成果が上がらないのに、核のごみの交付金で地域を発展させられるかは疑問だ。
 対馬の反対派住民の一人は「政治が明るい将来ビジョンを示せないから、核のごみ誘致なんて話が出てくるんだ」と話した。国は処分場の建設地を地方で熱心に探す前に、過疎地の振興策をあきらめずに充実させるべきではないのか。建設地は、離島や地方が豊かさを取り戻してから、他の地域も選択肢に入れて検討しても遅くはない。