<シリーズ論評 核のごみどこへ>38 低レベル処分 周知不足

<シリーズ論評 核のごみどこへ>38 低レベル処分 周知不足 

神奈川工科大教授・藤村陽氏(59):北海道新聞  2021/12/11

 

 原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場に埋めるのは、高レベル放射性廃棄物だけではない。使用済み核燃料からプルトニウムなどを取り出す再処理過程で出る低レベル放射性廃棄物超ウラン元素(TRU)廃棄物」も一緒に処分する。高レベル放射性廃棄物と比べ、TRU廃棄物は放射能漏れ対策が甘い。地震の直撃を受ければ、地上に放射能被害をもたらす恐れがある。
 TRU廃棄物は、核燃料の集合体の切れ端や、放射性物質が付着したフィルターを細断したものが含まれる。放射能が強いものもあり、地層処分の対象となっている。計画では1万9千立方メートル以上を処分する。
 処分事業を担う原子力発電環境整備機構(NUMO)はTRU廃棄物を地層に埋める際、ドラム缶などの容器に入れ、さらにこれらの数本をまとめて大きな鉄製容器に入れる方針だ。鉄製容器内にはモルタルを入れて隙間をなくすという。
 問題は鉄製容器の厚さだ。最大5センチとする方向で検討されており、最短300年で腐食する。高レベル放射性廃棄物を覆う鉄製容器が厚さ19センチで、千年持つとされるのと比べ、防御性能が低い。TRU廃棄物の鉄製容器は梱包(こんぽう)物によって大きさや形が変わるため、規格統一が難しいようだ。
 NUMOの包括的技術報告書によれば、断層地震が直撃して放射能が漏れる最悪シナリオの場合、年間の被ばく線量は核のごみでは最大2ミリシーベルトだが、TRU廃棄物は最大14ミリシーベルトに上る。TRU廃棄物にはヨウ素129や炭素14という水に溶けやすい放射性物質が含まれ、地下水に溶け込むと移動が速いため、数値が高くなっているが、NUMOはめったに起きないケースとして、問題ないという立場だ。
 NUMOはまた、将来、容器の腐食などで放射性物質が漏れ出し、人の生活圏内に入り、飲料水を通して体内に取り込んだとしても被ばく線量は低いとして、問題視していない。
 ただ、地下水の水量が少なければ放射能の濃度が高くなり、それを将来の人間が水源として使えば被害は大きくなる。さまざまなリスクを考えれば、本当に問題ないと言えるのか。
 国やNUMOはこれまで、TRU廃棄物の地層処分について積極的に説明することはなく、最終処分場選定に向けた文献調査が行われている寿都町神恵内村でも認識している人は少ないだろう。後になって「これも埋めます。こんなリスクがあります」と言われても、受け入れる側にとっては「後出しじゃんけん」に映り、不信感が募る。まず初めに埋めるもの全てを明示し、リスク面を含めて丁寧に説明すべきだ。(聞き手・山田一輝)
<略歴>ふじむら・よう 東京都で生まれ、小中高は福島市で育った。東大大学院修了、2009年から現職。専門は物理化学。神奈川県厚木市在住。