<シリーズ論評 核のごみどこへ>37 候補地選定 差別の構造 沖縄大教授・吉井美知子氏(64)

<シリーズ論評 核のごみどこへ>37 候補地選定 差別の構造 沖縄大教授・吉井美知子氏(64)

 
吉井美知子氏
吉井美知子氏

 2011年に東京電力福島第1原発事故が起きた後も、日本政府は原発の海外輸出を目指した。私はベトナムの研究者として、ベトナムへの原発輸出を何とか止めたいと思った。

 ベトナム原発建設予定地はチャム人という先住民族の土地だった。彼らは2千年前からそこに住み、土地との深いつながりがある。先祖代々の時間を背負い、同じようにこの先の時間も子孫に引き継ぐという責任。彼らは「原発は文化を破壊する」と命懸けで反対した。16年にベトナム政府は計画を撤回した。チャム人の詩人は「私たちが反対したから計画が止まったわけではないが、あふれそうなコップの水に最後の一滴を入れた」と話した。

 日本にとってベトナムは海の向こうの遠い国だ。自国で原発事故を起こしても日本政府は「事故から教訓を得たので安全です」「欲しいなら売ります」「お金がないなら貸してあげます」と原発を売り込んだ。

 そこには差別の構造がある。安全性への懸念から自国では建てられない原発を、遠いよその国に造ろうとしたのだ。同様の構造が日本国内でも厳然とあることを、高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の問題が私たちに突き付けている。

 なぜ後志管内寿都町神恵内村という道内の2町村が候補地にならなければいけないのか。物事を決める人たちは首都圏に住んでいて、東京から離れた場所ならOKらしい。国内の米軍基地が沖縄に集中していることと、日本全国の原発から出る核のごみを北海道に押しつけることは同じ構図だ。その代わりにお金はあげるから、というのは完全な上から目線でしかない。

 核のごみは埋めてはいけない。地中深く見えないところに埋めてしまうと人は忘れてしまう。無責任だし何より危険だ。地上に保管して「昔こんなアホな祖先がいました。ごめんなさい」とでも書いておくのがよい。埋めて隠したら子孫に申し訳ない。チャム人のような責任感を持ちたい。

 私は9月に寿都町などを回り、11月には札幌でアイヌ民族の人たちが「核のごみで大地を汚すな」と声を上げたフォーラムに参加した。北海道もアイヌ民族が大事にしてきた土地だ。そこに核のごみを埋めることは倫理的に許されない。その不正義に多くの人が気づいていない。アイヌの人々は勇気を出して訴えた。私たちも「おかしい」と声を上げるべきだ。(聞き手・編集委員 関口裕士)

<略歴>よしい・みちこ 1957年京都市生まれ。京大卒。パリ第7大修士、東大博士。専門はベトナム市民社会研究。三重大教授を経て2014年から現職。編著に「原発輸出の欺瞞(ぎまん)」。