核のごみ、迫る決断の時 

核のごみ、迫る決断の時 
東京電機大教授・寿楽浩太氏/長崎大教授・鈴木達治郎氏
毎日新聞 2021/10/16 
 
議論少なく国民合意なし 
東京電機大教授(科学技術社会学) 寿楽浩太氏
 今回の町長選は「賛成」対「反対」の住民投票に近い意味合いを持つ選挙になる。しかし、新型コロナウイルスの影響で、文献調査をしている原子力発電環境整備機構(NUMO、ニューモ)と町が主催する住民との「対話の場」は、予定していたほどの頻度では開かれず、議論が十分深まっているとは言えない。
 300メートル以上深い地下にある最終処分場で埋める「地層処分」について社会の共通認識が十分ではない。最終処分場の選定手続きなどを定めた「最終処分法」が2000年に成立した際、国会審議はごく短期間で論戦もなく、国民に「決めた」という感覚がない。そのため、いざ候補地を選ぶ段階になって、住民の間では国内で地層処分ができるのかといった「そもそも論」からの議論を望む声が上がる。候補地にならない地域では「自分とは関係ない話」と受け止められてしまう。
 処分先を決めているフィンランドスウェーデンといった「先進国」では、「そもそも論」の議論を尽くし、地層処分の国民的な合意を得てから、処分地探しを進めてきた。ここが日本と大きく違う。大事なことは「みんなで決めた」という共通認識を社会で持てるような政治的な機会を作れるかどうかだ。【聞き手・岡田英】
 
 
手続き不透明、信用乏しい 
長崎大教授(原子力行政)鈴木達治郎氏
 政府は「前面に立つ」として「科学的特性マップ」を公表したが、アイデアは良かったものの活断層の有無などの科学的評価と、海岸から距離が短いなどの社会的評価が混在している。学術会議のような第三者が作ったり、客観的評価をしたりもしていないので信用に乏しい。
 自治体が手を挙げたのか、国が先に働きかけたのかも見えない。むしろ全国で数カ所以上の地域を国が指定し、その地域内で各自検討してもらう方が、透明性もあり責任ある関与となるのではないか。経済産業省はまだ非公表の候補地を当てにしているのかもしれないが、一つだめになれば次、という形だと手を挙げた自治体の重荷になる。実際、寿都町が揺れているだけ、となっている。
 原発核燃料サイクル政策を今すぐやめたとしても、最終処分場は必要だ。次世代に決断を先送りしないことを考えれば早く決めるに越したことはないが、固定的なスケジュールにはこだわらず、合意形成すべきだ。
 海外では合意までの間は地上で貯蔵したり、まず一部のごみを捨てて様子を見て改めて可否を判断したりする国もある。日本は「やるか、やらないか」と極端すぎる。いろいろなオプションを用意し、国民が安心できる方法を選ぶべきだ。【聞き手・岡大介