揺れる 大間原発の行方

揺れる 大間原発の行方

2021/9/26 朝日新聞デジタル


電源開発(Jパワー)が青森県大間町に建設している原子力発電所は、長い歳月を経てなお本格工事に至っていない。大雨被害による国道279号の通行規制で、原発避難路にあたる国道バイパスの工事の遅れが注目を集めた。そうした中で自民党総裁選に立候補した河野太郎氏が核燃料サイクル政策の見直しを表明。大間原発や避難路の先行き不透明感に拍車をかけており、地元では衆院選での本格論戦を求める声も高まっている。
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 「他の原発は避難路がしっかりしている。Jパワーが避難路整備のプロジェクトを作り、政府と話し合う努力をしてほしい」
 9月2日の町議会大間原発対策特別委員会で、5期目のベテラン町議の宮野昭一さん(70)が口火を切った。Jパワー常務執行役員の倉田一秀・大間現地本部長は「我々が道路を作るのは困難。県の力を引き出さなければ国も動けない」と述べるにとどめた。
 むつ市から風間浦村を抜け、大間町へ通じる279号は、津軽海峡と急傾斜地の間を縫うように走る。他の道路はさらに狭く、原発事故の際の避難路として十分とは言いがたい。
 東日本大震災を受けて県は2012年度、大間原発の避難路として、主に279号のバイパスを新設する計23・8キロの整備計画を策定した。ただ、着工しているのはむつ市内の2・2キロのみで、他は財源確保や用地買収の見通しが立たないことから、全体の完成年度や総事業費などは公表されていない。
 8月の大雨で災害時の迂回(うかい)路として注目されたが、大間原発運転の見通しが立たないこともあり、工事の遅れはさほど着目されてこなかった。
 大間原発は、使用済み核燃料の再処理で取り出したプルトニウムとウランの混合酸化物(MOX)燃料を100%使う「フルMOX」の改良型沸騰水型炉(ABWR)だ。MOX燃料は六ケ所村の日本原燃などで作られる。
 河野発言が突きつけたように核燃料サイクルが見直されれば、国内外に保有する余剰プルトニウムの削減や再処理事業などが停滞する可能性がある。そうなれば大間原発も抜本的な見直しを迫られかねない。
 町議10期目で議長を務める石戸秀雄さん(71)は、河野発言に「避難路がいつできるか分からないなら、原発建設そのものをやめてしまえと飛躍されてしまうのではないか」と危機感をあらわにする。
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 大間町での原発建設は、動きが出てから半世紀近い歳月が流れている。
 町商工会は1976年、企業誘致と地場産業の開発振興を狙い、町議会に調査を請願した。主力産業の漁業が衰退の兆しを見せる一方、町財政が潤沢とは言えない状況を打開しようと動いた。一方で漁業への悪影響を心配して反対する住民も多く、住民の間で意見が対立し、激しい議論が交わされた。
 83年に立地調査が始まった。町議会は賛成、反対両派が対立したが、84年には原発誘致を賛成多数で決議した。83年の日本海中部地震で町役場が傾くなどして機能不全に陥ったこともきっかけになったとされる。漁業への影響を危惧し、悩んでいた石戸さんも、町財政を案じて「誘致すれば金銭的な見返りがある。怖いものでなければ、庁舎建て替えのためにも進めるしかない」と賛成に回った。
 だが、その後も順調には運ばなかった。
 88年着工、94年運転開始の予定だったが、炉型が新型転換炉(ATR)からABWRに変更されるなどして延期を繰り返す。2008年5月に12年3月の運転開始をめざしてようやく着工したものの、東日本大震災原子力規制庁による新規制基準の審査に時間を要するなどした結果、本格工事の再開が22年後半、運転開始は28年度までずれ込んでいる。
 そうした中で核燃料サイクル政策見直しという「パンドラの箱」が、河野発言で開いた。MOX燃料を使うABWRで進めるのか、変更するのか。大間原発をめぐる論議と向き合ってきた石戸さんは「核燃サイクル事業をやめるなら、やめるための技術者も必要となる。総裁選や衆院選で、エネルギー政策全般について、幅広く議論するべきだ」と訴える。(安田琢典)