東京大会はいくら? 莫大な放送権料、五輪競技の生命線
編集委員 北川和徳

 

2021/6/17  日本経済新聞

 

 

新型コロナウイルスの感染拡大で東京に緊急事態宣言が発令されても、東京大会の開催にこだわり続ける国際オリンピック委員会IOC)のバッハ会長やコーツ副会長の一連の言動は、開催国の事情を考慮していないと感じた多くの日本人を怒らせた。IOCが開催にこだわる理由は、莫大な五輪の放映権料を失いたくないからとされる。では、東京大会の放映権料はいくらになるのだろう。

五輪の放映権料については、米NBCが2014年から32年までの10大会を約120億3000万㌦(約1兆3000億円)で契約しているとしばしば報道される。ところが、複数大会をパッケージで契約するためか、東京を含め個別の大会の金額はまず出てこない。

NBCは10大会をまとめて契約したわけではない。まず14年から20年までの4大会を11年に契約した。五輪の放映権は通常は4年間の冬季、夏季の2大会がセットとなり、14年ソチと16年リオデジャネイロが20億㌦。18年と20年は合わせて23億8000万㌦と発表されている。当時、その両大会の開催地、平昌と東京はまだ決まっていなかった。

こちらはもちろん米国向け放映権。日本向けはNHKと民放でつくるジャパンコンソーシアムが14年に2大会660億円で購入した。ともに時差のないアジアが舞台のため、14年と16年両大会の360億円から大きく値上がりした。

放映権はこのほかヨーロッパ、アジア、オセアニア中南米など世界中に販売される。米国に次ぐ大口契約となる欧州は、ユーロスポーツが15年に18年から24年の4大会をまとめて13億ユーロ(約1700億円)で契約している。

IOCの財務報告によると、13年から16年の4年間、2大会からの放映権料収入は総額41億㌦を超えた。NBCの支払いがほぼ半分を占める。

18年と20年の数字はまだ出ていないが、いくらか値上がりしているようだ。夏季大会の放映権の方が冬季より高いことを考慮すれば、東京大会の全世界向けの放映権料は3000億円前後と考えられる。確かに莫大な金額である。

こうしてIOCが稼いだ資金は五輪実施競技の国際競技連盟(IF)や各国・地域の五輪委員会(NOC)、各大会の組織委員会などに約9割が分配される。この資金の流れが止まれば、各競技の国際大会は激減してアスリートの活躍の場は失われ、途上国のNOCは五輪に選手を派遣することも難しくなる。つまり、IOCの強硬な姿勢には、競技団体やアスリートにも責任があるということだ。

世界で最も五輪好きとも評された日本だが、IOCと五輪運動のイメージは損なわれてしまった。東京大会を安全に開催できたとしても、以前のようには戻れないだろう。プロを除けば、この国のスポーツは五輪に依存して発展してきた。その構造を見直すべき時期が迫っていると感じる。