rapture_20210705195919rapture_20210705200000rapture_20210705200028rapture_20210705200102rapture_20210705200127rapture_20210705195944https://www.hokkaido-np.co.jp/article/563364?rct=n_hokkaido

フィンランド南西部、バルト海に浮かぶオルキルオト島。その地下435メートル、ビルの100階分に相当する深さの岩盤で5月、トンネルの掘削が始まった。

 10万年もの間、人間が近づくことのできないほど毒性が強い高レベル放射性廃棄物(核のごみ)を実際に埋める最終処分トンネルだ。原発から出る核のごみの最終処分場として世界で唯一、建設が進む「オンカロ」の核心部分となる。

 処分事業の実施主体ポシバ社によると、高さ4・5メートル、幅3・5メートル、最長350メートルのトンネルを100本造る計画で、亀裂がないか見極めながら、1週間に20メートルのペースで慎重に掘り進めている。2025年には核のごみの埋設が始まる。

 「自分たちが関わった仕組みの中で、世界初の処分場が造られていく。誇りに思うよ」。オンカロが立地するエウラヨキ自治体のベサ・ラカニエミ町長は、北海道新聞のオンライン取材に迷いなく答えた。人類の歴史の尺度で測りきれない長期間、放射能のリスクを抱えることへの心配や後ろめたさは感じさせない。

 よって立つのは二つの「基盤」だ。一つは19億~18億年前から変化していないという安定した岩盤。もう一つは、政府や事業者の原発政策への信頼だという。

 10万年というはるか未来の世代にまでリスクが残る「負の遺産」をどう扱うのか―。日本では、核のごみの行き場を決めないまま、半世紀以上も原発を稼働し続けている。

■早かった初動

 一方、世界に先駆け地層処分を開始するフィンランドは、初動が早かった。

 同国が原発の商業利用を始めてわずか6年後の1983年。政府が地層処分の方針と計画を決定したのを受け、国内の電力会社TVOが文献調査に着手した。地質の適性や人口密度などで約100カ所を選び、地元の意向を踏まえて5カ所に絞ってボーリング調査を実施。2001年にエウラヨキに決まった。

■分厚い岩盤層

 ほぼ計画通り。核のごみ処分の難題を先送りすることはなかった。経済雇用省エネルギー部のリーサ・ヘイキンヘイモ次長は「いつかは処分しないといけないのは最初から分かっている。自分たちで始めた原発だから、この世代で責任を取るのは当然」と語った。

 フィンランド語で「隠す場所」「洞窟」を意味するオンカロ。施設周辺は分厚い岩盤層で、19億~18億年前の結晶質岩でできている。地質は安定し、地震を引き起こす活断層も確認されていない。エウラヨキには原発が立地し、フィンランドで核のごみとして地層処分する使用済み核燃料の運搬距離が短いことも選定の決め手になった。

 かつてエウラヨキは、ジャガイモなどの畑作や林業が中心の典型的な農村だったという。「自治体として雇用をつくるために産業が欲しかった」(ラカニエミ町長)と原発を誘致し、地域は一変。約6千人だった人口は今では約9500人に増え、原発関連施設からの税収が自治体の予算約82億円の3分の1を支える。

 最終処分場も長期間の雇用と税収をもたらす電力産業の一施設として受け入れられた。地元に「迷惑施設」との意識はなく、処分場や調査受け入れに対する「迷惑料」の意味合いが強い国からの補助金はない。オンカロは16年12月、政府の許可を受け本格着工した。

■終了は100年後

 ただ、初めから地元住民が原発を歓迎していたわけではなかった。70年代には激しい反対運動もあったという。「地元の理解を得るのに最も大切なのは事業の透明性」。TVOなどが設立した処分事業の実施主体ポシバ社のパシ・トゥオヒマー広報部長は強調する。

 当時、TVOは原発の建設過程を新聞などのメディアで報告。バスツアーで誰でも見学できるようにし、住民からの質問には何度でも応じた。操業開始後もトラブルや事故などの「負の情報」をためらわずに公開したという。

 トゥオヒマー広報部長は「人間なので間違いは起こす。それを隠せば、後で分かった時に不信感に変わる。だから、全て正直に話すことが重要」と指摘。当時からの情報公開の積み重ねが今の信頼につながっていると説明する。

 オンカロでは、同国の原発5基から出る核のごみ6500トン(ウラン換算)分を、100本のトンネルに埋める。全て終わるのは100年後。その後は、地下施設を全て埋め戻して封鎖し、時間とともに忘れ去るのだという。

 4年後にも、地下深くのトンネルへの核のごみ搬入が始まる。フィンランドが先行する世界初の「解決策」は着々と実行に移されている。(内本智子)