<核のごみどこへ 五つの論点>1 政治 国策なのに地方任せ 自発的決定 内実は「服従」

<核のごみどこへ 五つの論点>1 政治 国策なのに地方任せ 自発的決定 内実は「服従」:北海道新聞 どうしん電子版 /
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函館市から海を挟んで20キロ余り、青森県下北半島の北端にある大間町。建設中の大間原発の誘致に尽くしてきたという野崎信行町議(66)は「小学校も病院も新しくなった。原発が来なかったら住民の生活は最低レベルのままだった」と、原子力関連の交付金の「恩恵」をとうとうと話した。

 内閣府の調査によると、青森県の住民1人当たりの所得は約250万円(2018年)で47都道府県で2番目の低さだ。特に下北は県内平均を大きく下回り、野崎氏は「大間は貧しく、大間高校を出ても1、2人しか地元に残らない。本当は嫌だけど、原発に頼るしかない」と明かす。

 原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定に向けた文献調査を受け入れた後志管内寿都町神恵内村にも、それぞれ2年間で最大20億円の交付金が支払われる。両町村が調査を誘致した背景にも過疎化があり、交付金で地域を立て直したいとの狙いがあった。

■他に手段なく

 ただ、欧米の放射性廃棄物問題に詳しい工学院大の小野一教授(55)はこう言う。「産業が衰退し財源が厳しい自治体が他に手段がない中で選ばざるを得なかっただけ。国の原発政策が生み出した不条理の押しつけで、自発的意思で誘致したとは言えない」

 国が核のごみの最終処分場選定手続きを法的に定めたのは00年。選定作業が遅々として進まない中、国は17年、最終処分場の適不適地をおおざっぱに色分けした「科学的特性マップ」を公表した。だが、その後も候補地を具体的に絞り込むことはなく、基本的には巨額の交付金を誘い水とし、市町村の「立候補」を待つ姿勢を貫いてきた。

 東京電力福島第1原発事故の独立検証委員会(民間事故調)に参加し、「国の責任の所在のあいまいさ」を指摘してきた東大公共政策大学院の鈴木一人教授(50)は核ごみ調査の現状をこう見る。「日本では地方自治体の力が意外と強く、国策でも首長が嫌だと言えば進まないことがある。政治主導で一気に物事を決めるのは困難な統治構造で、国は補助金で介入する形でしか自治体を動かせない」

 これに対し、東京工大の中島岳志教授(46)は核ごみ調査の交付金について「国は地方が自ら考えて主体的に受け入れたかのように仕向け、『自発的服従』を強いる」と指摘する。07年に全国で初めて文献調査に応募した高知県東洋町は町を二分する対立に発展したが、こうした事態に直面したとしても、国は自治体の「自発的決定」の結果だとして「責任を問われないようにしている」という。

■国と協議拒否

 では国はどこまで関与を強めるべきなのか。寿都町で文献調査受け入れの動きが表面化した際、「札束で頬をたたくやり方だ」と国を批判した鈴木直道知事(40)は再三、「国は科学的に候補地を絞り込み、主体的に責任を持って理解を得ていくべきだ」と訴えてきた。原子炉工学専門で原発推進派の奈良林直・北大名誉教授(69)も「国は自治体任せで手を抜きすぎ。首長は反対運動への対応などいろいろ負担がある」とし、国が主導しないと候補地選定は進まないとみる。

 一方、地方自治体には国が関与を強めることへの警戒感もある。東京電力と日本原電の原発から出た使用済み核燃料を一時保管する施設が間もなく稼働する青森県むつ市は昨年12月、大手電力でつくる電気事業連合会経済産業省から施設を業界全体で共同利用したいとの提案を受けた。だが宮下宗一郎市長(42)は「核のごみ捨て場ではない。霞が関の決定を地方に押しつけることはあってはならない」と協議を拒否した。

 電力業界に詳しい国際大の橘川武郎教授(69)は「正面からきっちり原子力の問題点を話さず、おいしい話ばかりしてきたから、むつ市長のような警戒感を招く。政府が逃げ回っている限りは何も決まらない」と説く。政治の不在が国策の針路を曇らせている。」