東京五輪、成否分けるのは接触遮断か-危険と隣り合わせのコロナ禍で

東京五輪、成否分けるのは接触遮断か-危険と隣り合わせのコロナ禍で
Lisa Du、Michelle Cortez
2021年3月31日 11:16 JST

東京五輪、成否分けるのは接触遮断か-危険と隣り合わせのコロナ禍で - Bloomberg

 

「バブル」空間の確保
  この1年間で世界で行われたスポーツイベントには成功ストーリーもあれば、慎重を促す例もある。

  大会の運営者は、米プロバスケットボールNBAの成功例に倣うことを期待している。NBAは2020年夏・秋の3カ月間、競技を行ったが感染者は出なかった。ただ、NBAの試合はフロリダ州オーランドのウォルト・ディズニー・ワールド・リゾートの施設を外界との接触遮断のための「バブル」として利用し、関わったのはスタッフやコーチを含めても1000人未満だった。

  今年のテニス全豪オープンで開催者は感染対策に真剣に取り組んだ。選手には検査を求め、到着後の隔離も義務付けた。それでもメルボルン行きのチャーター便の一部で選手や支援スタッフに感染例が見つかった。大会とは無関係の市中感染の急増を受け、一時は途中から無観客試合となった。隔離や不十分な練習時間が原因とされる選手の負傷もあった。

  このイベントの結果、現地の感染拡大や選手の間での感染といった事態は生じなかったが、どれほど厳重に予防措置を講じても、どんなことが起こる可能性があるかを示す形となった。

  種目ごとにリスクの度合いも異なる。米プロフットボールNFLでは試合中の選手のウイルス感染がなかったことを研究結果は示した。ただ、高校のレスリング大会は感染の急拡大を引き起こした。東京五輪は33競技が42の競技会場で開催される。


五輪期間中の感染症流行例も
  対応をさらに複雑にするのはオリンピックの親睦的な性質だ。選手村は人々が交流するよう設計されている。長時間の会話や集団での食事は禁じられるが、こうしたルールをどのように順守させるかは不透明。アスリートの大半は20代で、一部はまだ10代だ。こうした若年層でのコロナウイルス伝播はより顕著でコントロールが難しい。

  シンガポール国立大学公衆衛生学部のアレックス・クック准教授は「プレーブックは書かれているが、どれだけ厳格に実施されるかは不明だ」と指摘した。

  大会の円滑な運営にはボランティアのほか、調理や清掃、行事進行などのため常時、接触遮断の「バブル」を出入りする現地スタッフが必要で、大会組織委員会と東京都によれば、その数は恐らく15万人余りに上る見通しだが、その扱いは不明で、プレーブックにも明確な指示はない。

  過去にも五輪期間中の感染症流行の例はある。18年の韓国・平昌冬季五輪では約200人のアスリートがノロウイルスに感染。その2年前のブラジル・リオの夏季大会はジカ熱流行のさなかに開かれた。12年のロンドン五輪では選手1万568人のうち300人余りが呼吸器疾患にかかった。


  米フロリダ大学でアスリートを含むコロナ対応措置を統括している疫学者のイェルネ・シャピロ氏は、「これはコロナウイルスがなかったとしても大きなタスクだ」と指摘した。