中国を警戒、連携広域化 安保法5年「防護」に実績 英仏加印とも協定

中国を警戒、連携広域化 安保法5年「防護」に実績 英仏加印とも協定

 
中国を警戒、連携広域化 安保法5年「防護」に実績 英仏加印とも協定
 
中国を警戒、連携広域化 安保法5年「防護」に実績 英仏加印とも協定
 

 安全保障関連法施行からの5年間で、自衛隊と他国軍との連携が深化・広域化している。実施に必要な法的手続きが少ない「武器等防護」で新任務の実績を重ねながら、米軍とは「いまや連絡を取り合わない日はない」(防衛省幹部)ほど密な関係に。中国の海洋進出を背景に米軍以外の多国間でも連携強化を探る。任務拡大は憲法に基づく「専守防衛」を骨抜きにする危険をはらむが、情報公開は限定的で、実態を検証できないままだ。

 「安保法制で日米同盟はかつてないほど強固になった。地域の平和と安定にも寄与している」。岸信夫防衛相は26日の記者会見で、5年の変化をこう語った。

 安保法で可能となった自衛隊の任務のうち、5年間で最も実績を重ねたのが、平時から他国の艦船などを守る武器等防護。背景には実施手続きの「手軽さ」と、沖縄県尖閣諸島や台湾への軍事的な圧力を強める中国へのけん制がある。

 武器等防護は、初めて他国軍から警護要請があった場合は国家安全保障会議の審議が必要だが、2回目以降は防衛相の判断で実施できる。武器使用基準を緩和した国連平和維持活動(PKO)など、安保法で加わった自衛隊の他の任務と比べ実施のハードルは低い。

 昨年の武器等防護は25回と急増し、うち21回は共同訓練時の警護だった。岸氏が16日の日米防衛相会談後の記者会見で、自衛隊と米軍との共同訓練場所について、あえて「尖閣諸島周辺」と明かすなど、日米は訓練を通じて中国に圧力を強める。防衛省幹部は「武器等防護は米軍が命を預ける行為。自衛隊への信頼が増している」と自賛し、連携を見せつけたい考えだ。

■米と一体化加速

 安保法施行に合わせ、日米両政府は平時から自衛隊と米軍の活動を調整する三つの機関を常設。今年と昨年就役した海上自衛隊イージス艦2隻には、敵のミサイルや航空機の高精度な位置情報を米軍側と共有できる「共同交戦能力(CEC)システム」を搭載するなど一体運用は進み続ける。

 中国への警戒監視を名目に、今や連携強化は米軍にとどまらない。「準同盟国」と位置付けるオーストラリアとは昨年、武器等防護の対象に加えることと、自衛隊とオーストラリア軍が相互訪問する際の法的地位を定める「円滑化協定」締結で大枠合意。同内容の協定は、日米地位協定以外では初めてで、防衛省幹部は「これをひな型にほかの国とも結びたい」と語る。

 安保法施行時は米豪2カ国だった物品や役務の提供も、英国、フランス、カナダと新たに協定を結び、インドとの協定も今後発効する見通し。今年2月の共同訓練では海上自衛隊が仏軍艦に初めて給油した。英国も今年、空母を東アジアに派遣する予定で、防衛省は物品の提供や共同訓練などを実施する方針だ。

■見えぬ任務実態

 安保法を巡り、政府は「可能な限り情報を公開する」としたが、実際は極めて限定されている。新任務で突出する武器等防護も、艦船や航空機といった防護対象や共同訓練など活動内容ごとの実施件数が、年1回公表されるだけ。活動内容も大枠にとどまり、「米軍の運用に直結する」として日時や場所、自衛隊の部隊名などは非公表だ。洋上給油などの実態も分からない。

 流通経済大植村秀樹教授(安全保障論)は「情報が公開されなければ国民の判断材料がない。世論に基づく政治的なコントロールも利かなくなる恐れがある」と指摘。30年などの期間を定めてでも将来的に公表をすべきだとし「政府は記録をしっかりと残して公開するという姿勢を示すべきだ」と話す。(鈴木誠

<ことば>安全保障関連法 安倍前政権は安全保障政策の柱に「積極的平和主義」を掲げ、2014年7月、従来の政府の憲法解釈では禁じられていた集団的自衛権行使の容認に踏み切った。15年9月に成立し、16年3月から施行された安保法は、これを踏まえ自衛隊の任務を具体化した。密接な関係にある他国に武力攻撃があり、日本の安全が脅かされる場合を「存立危機事態」と規定し、ほかに手段がないなどの要件を満たせば、集団的自衛権の行使が可能としている。放置すると日本の平和と安全に重要な影響を与える「重要影響事態」では、自衛隊は実際に戦闘が起きている現場を除き、地理的制限なく他国軍の後方支援ができる。