古書の街・神保町の深化 文化を発信、起業も呼び込む

古書の街・神保町の深化 文化を発信、起業も呼び込む

 

神保町エリアは長く住む人と「よそもの」としてのビジネス人が同居し「京都に似た空気がある」と感じる。家賃不要の自社所有の建物にある店では「売れ筋」以外のモノを発見できる。古いビルの2階、3階は家賃が安いため若い人が独立・開業しやすい。「中央や本社だけがもうかる『超資本主義』以前の、本来の資本主義の姿がこの町にはある」と糸井さん。社員も、社員同士の関係にこもらず町の人とどんどんかかわらせる考えだ。

「ものを作る人が刺激を受ける町」だと糸井重里社長 =山口朋秀撮影

本社ビル近くには「人生最後の大仕事」という「ほぼ日の學校(がっこう)」と名づけた教室も開き、生活文化や文学などの講座を開催しネットでも配信していく。もともと事務所内で2年続けた「学校」事業の拡張移転先を探すうちに、この町の魅力に気づいたという。

プログラムディレクターである「学校長」を務める河野通和さんはもともと中央公論社や新潮社で本好きに知られる全集や雑誌を手がけた編集者だ。学校が入居するビルは、高度な技術を持つ印刷会社の元オフィス兼工房だった。「ここで講義を開くのは、身が引き締まる」。文化の積み重ねが厚い神保町エリアには、ものを考える人を引きつける空気があると語る。

神保町を「おじさんのテーマパーク」だと揶揄(やゆ)気味に呼ぶ向きもある。楽しいモノに満ち、1日楽しく過ごせるからだ。しかしテーマパークでは未知の人と友達になったり、自由に仕事を始めたりすることはまずない。買い物の町から「起業」と「発信」の町へ――。神保町が秘めてきた力を発揮し始めたようにみえる。

石鍋仁美

鈴木健撮影

[NIKKEI The STYLE 2021年1月17日付]