武田砂鉄のいかがなものか!? ⑭…あれってどうなりました?
2020/9/15 しんぶん赤旗
これが掲載になる頃には新しい自民党総裁が決まっているのだろうが、執筆時点でも決まっているようなものだ。派閥の長老たちが横並びになって会見し、菅義偉官房長官への支持を表明するなど、今なお色濃く存在する露骨な派閥政治を国民にさらしている。その場に若い人はいない。女性もいない。当選回数の多い男たちが、自分の存在感をいかにして示すか、あるいは保つかを競っている。
総裁選の間、新型コロナについての報道が薄まった。コロナは総裁選にあわせて休んでいたわけではない。菅義偉官房長官はパンケーキが好き、といったプライベートの垂れ流しも相次ぎ、決して平和ではない。世の中でも「平和ボケ」は起きるのだと、その報道にあきれてしまった。
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安倍首相が辞意を表明したのは8月28日。あれからまだ2週間ほどしか経っていない。次の総理は誰かばかりに興味を向け、この7年8カ月の間に安倍政権が何をしてきたのか、何をそのままにしてきたのか、何を隠してきたのかについての検証が乏しい。
とりわけ菅官房長官は安倍政権を継承すると述べていた。継承するならば、何をどう継承するのか、継承するためにどんな改善が必要なのか、詳細に語る必要がある。だが、とにかく継承すると言う。自分の土地が荒れているのに、こんな家を建てたいと話をしている。順番がおかしい。
問うべき課題はいくらでもある。持続化給付金事業の中抜きの実態、GoToキャンペーンの是非、アベノマスクをはじめとした新型コロナ対応の検証、辺野古基地問題、イージス・アショア、河井克行・案里夫妻逮捕、東京五輪開催の可否など、いくつも頭に浮かぶ。
無論、私物化が疑われる事案として、森友学園・加計学園・桜を見る会についての検証・説明が必要である。「ポスト安倍」の話をすればするほど、これらの課題が未解決のまま、しぼんでいく。安倍首相はこの数カ月、とにかく表に出て話すことを拒んだ。なぜんだか。黙っていれば、しぼんでいくからである。
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体調不良での辞任だが、安倍首相は会見で「(辞任後は)一議員として支えてまいりたい」と述べている。病状を揶揄するようなことはあってはならないが、今後も仕事を続けるのならば、なおさら、これまでの仕事が問われなければいけない。それを今回、メディアが怠ったのではないか。
辞意表明後にとられた世論調査で、安倍政権への支.持率が急上昇した。8月の調査と9月の調査で、支持率・不支持率がひっくり返っている。では、その1カ月の間に何があったか。突出した政策決定、これまで取り組んできた政策の結実があっただろうか。特にない。突出した出来事といえば、安倍首相が辞意を表明したことしかない。
長い間、お疲れ様でした、さぁ、次は誰でしょう、に移行するのが早すぎないか。新しい首相には、さぁこれからどうする、ではなく、あれってどうなりました、と問い詰める必要がある。(たけだ・さてつライター)