行き先ないまま…使用済みMOX燃料、全国初の取り出し 伊方原発

行き先ないまま…使用済みMOX燃料、全国初の取り出し

2020/1/14 朝日新聞

 

 伊方原発3号機では、原子炉に入れる燃料集合体157体のうち16体にMOX燃料を使い、2010年3月にプルサーマル発電を始めた。四電はMOX燃料について、定期検査を挟んで3回分の運転(1回約13カ月)に使う計画をたてていたが、11年の東京電力福島第一原発事故を受け、長期間停止。使用済みになるまで10年近くかかった。
 プルサーマル発電は、九州電力玄海原発佐賀県)3号機、関西電力高浜原発福井県)3、4号機でも実施している。高浜3号機も定期検査に入っており、近く使用済みMOX燃料8体が取り出される。
 国は原発の使用済み燃料を再処理し、取り出したプルトニウムを再び発電に使う「核燃料サイクル」を掲げ、プルサーマル発電をその柱に位置づけてきた。一方、使用済みMOX燃料をどう扱うか、エネルギー基本計画では「引き続き研究開発に取り組み、検討を進める」と記すにとどまり、具体的な方針を示せていない。
 伊方原発には、未使用のMOX燃料がさらに5体あり、四電は次回の運転でもプルサーマル発電を続ける方針を示している。使用済みMOX燃料について、四電は「十分な冷却能力を有しているプールで保管するため、安全性に問題はない」と説明している。(寺田実穂子、亀岡龍太)


「リスク面で問題、コスト面では再処理は無意味」
 「原子力市民委員会」座長の大島堅一・龍谷大学教授(環境経済学)の話 使用済みMOX燃料は、ウラン燃料より熱量の管理などが難しいとされ、リスク面で問題がある。取り出した後の再処理プロセスも決まっておらず、原発敷地内での当面の保管というのは事実上、永久的に置くことになりかねない。そもそも使用済みになったウラン燃料をそのまま処分した方が安くなると評価されており、コスト面でも使用済みMOX燃料の再処理は無意味だ。核燃料サイクルが成り立たない中、プルサーマル発電は実質的に目的が失われている。