『汐凪の花園~原発の町の片隅で』 「復興」って何だろう

『汐凪の花園~原発の町の片隅で』 「復興」って何だろう

 

 

「『復興』とかそんなことあんまり考えたことないですね。大熊町は帰れないとこだし、まったくある意味関係ない話」。

福島県大熊町に住んでいた木村紀夫さん=写真=は冒頭で淡々と語る。「夕凪の花園~原発の町の片隅で」(BSTBS、7日午前10時)は信越放送制作のドキュメンタリーで、今年の民法連賞の報道番組部門で優秀賞を受けた。

東日本大震災で被災し、7歳の次女・汐凪さんと妻と父親を失った。自宅一帯は原発事故で帰還困難区域に指定され、長女と長野県への移住を余儀なくされた。

大熊町に毎月通い、がれきの中から汐凪さんを探し続けた。

震災から5年9ヶ月後、撤去されたがれきから遺骨が見つかった。自宅周辺には、除染によって発生した土壌や廃棄物を保管する中間貯蔵施設が作られている。だが、木村さんは家族と暮らした土地を手放さず、手入れして一面に菜の花を植えた。BGMは無く、波と海風の音が、人間が作り出した人の住めなくなった場所の荒涼を伝える。

ディレクターの手塚孝典さんは「復興って何だろうと考えさせられる。終わらない原発事故の中に生きている人がいて、『復興』から置き去りにされる人もいる。一方でまた次々と原発再稼働が決まっていく。そこにある理不尽さを伝えたかった」と話す。

原発事故の歴史的検証を置き去りに「復興五輪」などと「復興」を体よき大義名分として使う動きもある。世にあふれる「復興」は誰がどんな意図を持って使おうとする言葉なのか、暗いものから目をそらさせようとはしていないか。一つ一つ立ち止まって考える必要があると認識させられた。
(定塚遼)

朝日新聞12月2日20面