自民の報道「圧力」に記者ら反発 萎縮は知る権利奪う

 自民の報道「圧力」に記者ら反発 萎縮は知る権利奪う

2019/10/16 沖縄タイムス


 7月21日に投開票された参院選から3日後の同24日。本紙記事への抗議会見を開いた自民党県連の島袋大幹事長は、会見が報道機関への「圧力」であることを否定した。
 県連が主に抗議したのは、選挙取材班だった私が同僚と共に執筆した連載記事。「もう、公認を取り消してもいいんじゃないか」。自民が公認した候補者の擁立を巡り、自民所属の県議から出た声を書いた部分だった。会見を開いた県連の中川京貴会長は「議員総会ではその話は出ていない」と述べ、記事は事実誤認と主張した。
 記事の内容を巡って抗議や苦情を受けることはあるが、一報道機関の報道内容に対し政党が多数のメディアを呼んで抗議会見を開くのは極めて異例だ。「沖縄タイムスの報道について」。会見の案内文にはこんなタイトルが付いていた。
 会見で私は最前列に座った。記事は取材に基づいており事実だ。ひるむ必要はなく、逆に抗議しようとの意気込みだった。
 だが同時に、公式な会見の場で、自分が当事者になったことへの戸惑いもあった。記事は正しいとの確信はあっても「騒動の源をつくってしまったのではないか」との思いは拭えなかった。
 そんなとき、あるテレビ局の先輩記者から「この会見は報道への圧力であり、看過できない」と電話が入った。会見の場では全国紙の記者が「各社を呼んで会見を開くのは極めて重大なこと。報道への圧力ではないか」と口火を切った。
 他社の記者たちの援護射撃に、とても救われる思いがした。私が感じていた「戸惑い」こそ、自民の圧力による「報道の萎縮」だと気付いた。
 自民党本部によるテレビ各社への選挙報道の公平中立・公正の要求や、元「慰安婦」を象徴する「平和の少女像」を巡り一度は閉鎖に追い込まれた愛知県の企画展「表現の不自由展・その後」が象徴するように、近年、報道や表現の自由への公権力の介入が著しい。
 報道が萎縮した結果、知る権利や表現の自由を奪われるのは有権者であり、一般市民だ。気付いたら権力による制限が当たり前にならないよう、正確で丁寧な記事を心掛け、報道を続けたい。
政経部・大野亨恭)