沖縄慰霊の日の安倍首相へのヤジが意味するもの

 

沖縄慰霊の日の安倍首相へのヤジが意味するもの

 

辰濃哲郎

RONZA 2019/6/30

 問題になっているのは刑法犯や道交法だけではない。1年半前の17年12月、普天間基地に隣接する宜野湾市普天間第二小学校の校庭に、重さ約7.7キログラムの米軍ヘリコプターの窓枠が落下した。児童に当たっていれば大惨事につながっていたはずだ。その6日前には、同小学校から約1キロ離れた緑ヶ丘保育園に米軍ヘリのものとみられる部品が落下しているのが見つかったばかりだ。窓枠が落下した小学校には、その後、防衛局から監視要員が派遣され、その監視員の指示で校庭から避難したのは、事故後、678回にのぼっているという。

 そして6月4日には、浦添市の中学校に、ヘリの翼を防護するゴム製のテープが落下しているのが見つかった。地元紙である琉球新報の6月6日付のWeb Newsによると、米海兵隊は、部品が軽量であることなどを理由に「人身や財産に脅威を与えない」と安全性を強調しているという。だが、問題は落下物の重量や大きさではない。これまで再三、政府や米軍に対して、教育施設や病院などの上空を飛行しないよう求めていたにもかかわらず、米軍が聞く耳を持たないことが問題なのだ。

 さらに、こうした部品落下事故があっても、捜査や調査が日米地位協定よって守られている米軍基地内に及ぶことはない。

 3年前の16年12月、名護市の浅瀬に米軍のオスプレイが不時着して大破した事故で、現場に駆け付けたメディアやジャーナリストが、米軍関係者によって退去させられそうになったという。メディアが抵抗したため、現場の様子を撮影した写真や動画が報道されたが、原因究明は米軍に委ねられる。最終的に事故原因は機体の欠陥ではなくて操縦ミスであったとの報告書が出ても、その検証すらできない。

 ここ数年、沖縄では河川や地下水から検出される有機フッ素化合物のPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)やPFOA(ペルフルオロオクタン酸)が問題となっている。発がん性が指摘されている有害物質で、米軍の嘉手納基地や普天間飛行場の周辺で検出濃度が異常に高く、米国の基準の30倍に達している。基地内で使われている泡消火剤が原因とみられるが、県が基地内の立ち入り調査を求めても、米軍は応じていない。

 事件事故や米軍ヘリからの落下物に有害な水質汚濁。本土ではあまり報道されていない事案もあるが、日米地位協定で日本の調査権が機能しない構造的な問題に喘いでいるのが、米軍専用基地の70%を抱えている沖縄の実態だ。その相手はほかならぬ米軍で、その親玉がトランプ大統領ということになる。沖縄問題が頻発しているいま、安倍首相がすべきことは、そのトランプ大統領と仲睦ましく「友人」を演出することではなく、抗議の意を示すべきだった。長年の懸案である日米地位協定の改定や、米軍の綱紀粛正を申し入れたのだろうか。辺野古の基地建設を巡って意見交換をしたのだろうか。同盟国とはいえ、言うべきことを言えずに高い買い物ばかりさせられている関係を「友人」と呼ぶならば、そのことに満足そうな笑顔を見せる安倍首相に失笑の輪が広がっても文句は言えない。