TPPあす発効 懸念残る「見切り発車」

TPPあす発効 懸念残る「見切り発車」

12/29 05:05 北海道新聞


 米国を除く11カ国による環太平洋連携協定(TPP11)があす発効する。

 日本が輸入する農林水産物2594品目のうち、82%の2135品目の関税が段階的に撤廃され、北海道農業も自由化の巨大な荒波に立ち向かうことになる。

 安倍晋三首相は国会答弁で「きめ細かな対策を講じて、不安や懸念にしっかり向き合う」と強調してきたが、対応が追いつかず「見切り発車」の感は拭えない。

 政府は、発効に伴って生じる生産者への悪影響を見極め、機敏に支援策を打ち出さねばならない。

 TPPで日本は毎年4月の関税引き下げを約束しており、年末ぎりぎりの発効となることで、1年目は実質3カ月で終了する。

 即座に影響が及ぶのが輸入牛肉である。現行38・5%の関税は、あす27・5%に下がり、来年4月1日には26・7%となる。

 参加国で輸入量最多のオーストラリア産の関税は、発効5年目の日豪経済連携協定(EPA)に基づき冷蔵肉29・3%、冷凍肉26・9%まで低下しているが、わずか3カ月でその水準を追い抜く。

 これを先取りした大手スーパーの一部が今月上旬、早くも同国産牛肉の値下げに踏み切った。

 道内で生産が多いホルスタイン種の雄との競合は避けられない。

 減収対策として、政府は生産者の赤字を穴埋めする経営安定対策事業を恒久化したが、急速な価格変動に対応しきれるのか十分な検証が欠かせない。

 酪農・畜産分野では、米国の参加を前提とした輸入枠や緊急輸入制限措置(セーフガード)のルールが維持され、国内生産者に不利に働きかねないのも心配だ。

 政府は、米国の復帰の可能性がなくなった場合に適用される「見直し条項」に沿った修正を早急に参加国に働きかける必要がある。

 最も懸念されるのは、TPP11の発効後、農産物の自由化がなし崩しに進むことである。

 来年2月には日本と欧州連合(EU)のEPAも発効し、チーズやワインなどはTPPを上回る関税引き下げ・撤廃が適用される。

 さらに年明けに始まる日米関税交渉を前に、パーデュー米農務長官は「TPP以上」の自由化を繰り返し求めている。

 食料自給率が40%を下回る状態を放置したまま譲歩を重ねることは認められない。政府は自由化の影響について試算をやり直した上で、国内の生産基盤の強化につながる施策に取り組むべきだ。