泊1、2号機存廃の行方は 全3基停止6年 小出力炉、道外相次ぎ廃炉 安全対策費巨額で

泊1、2号機存廃の行方は 全3基停止6年 小出力炉、道外相次ぎ廃炉 安全対策費巨額で

05/05 05:00 北海道新聞




 北海道電力泊原発(後志管内泊村)は5日、全3基の停止から6年となり、再稼働のめどが立たない中、古く発電能力の小さい1、2号機の存廃に関心が集まりそうだ。東京電力福島第1原発事故後に安全性審査が厳しくなり、四国電力伊方原発愛媛県伊方町)など、老朽化で追加投資に見合わないとして廃炉になるケースが、全国的に相次いでいるからだ。泊1、2号機も投資効果は高いとはいえず、再稼働方針の変更を迫られる可能性がある。

 「泊1、2号機(の稼働)は平成元年(1989年)以降で、3号機は日本で最も新しい加圧水型軽水炉(PWR)の発電所。残存期間を含めてまだ活躍できる」。北電の真弓明彦社長は4月27日の記者会見で、泊原発全3基を再稼働させる方針に変わりがないことを強調した。

 泊3号機(出力91万2千キロワット)の営業運転開始は2009年だが、1号機(同57万9千キロワット)は今年で稼働から29年、2号機(同)は27年になる。国は原発の運転期限を原則40年としているが、北電は、1、2号機について、1回に限り運転を20年延長できるルールの適用を視野に入れている。

 ただ、再稼働の可否を判断する国の原子力規制委員会の審査では、1、2号機の重要施設の直下にある断層が活断層であるかが焦点となり議論が続く。審査に合格しても、再稼働は20年以降にずれこむとみられる。

 一方で、泊原発の安全対策費は収まる気配がない。1〜3号機の個別の対策費は非公表だが、11年4月に「200億〜300億円」としていた全体の対策費は、福島第1原発事故後に導入された新規制基準に合わせるために「2千億円台半ば」に膨らんだ。今後は、敷地の液状化対策のため建設する新しい防潮堤や、テロ対策などの特定重大事故等対処施設の整備費も上乗せされ、「少なくともさらに数百億円かかる」(北電関係者)見込みだ。

 道外では費用対効果から従来の再稼働方針を転換し、原発廃炉にするケースが相次いでいる。11年3月の福島第1原発事故後、廃炉が決まった原発は伊方2号機を含めて9基(福島第1の6基を除く)。泊1、2号機と同様の出力60万キロワット以下の原発が7基を占める。出力が小さい原発ほど売電力量が少なく、採算が合いにくいためだ。

 3月に廃炉が決まった伊方原発2号機(出力56万6千キロワット)。四国電力によると、新規制基準を満たすには、タービン建屋の耐震補強などに約1900億円がかかるが、2号機の稼働で節約できる火力発電の燃料費は年200億円にとどまる。広島高裁から運転差し止め仮処分決定を受けて停止している3号機(出力89万キロワット)が、年350億円の燃料節約につながるのに比べて非効率と判断した。

 伊方2号機は1982年に営業運転を開始。運転期限の2022年まで4年残っており、運転延長の選択肢もあったが、佐伯勇人社長は「安全対策工事に投資するコストの回収にリスクを伴う」と廃炉を決断した。四国電力は2年前に伊方1号機(同56万6千キロワット)を廃止しており、今後は3号機の1基態勢となる。電力大手の経営に詳しい東京理科大橘川武郎教授は「追加投資に見合わないと判断すれば、原発廃炉は今後も続くだろう」とみる。(石井努、細川伸哉)

■全基再稼働なら大量余剰 節電、自由化で電力販売減

 泊原発1、2号機の廃炉論議が現実味を帯びる背景には、道内の“電力余り”の現状がある。北電は「安定供給のためには泊原発全3基は欠かせない」と主張するが、すべての原発を再稼働させると、電力は大量に余りかねない。

 北電によると、2017年度の販売電力量は前期比7・5%減の248億600万キロワット時で、10年前より24%も減った。東日本大震災後、道民に節電が浸透したほか、16年4月の電力小売り全面自由化に伴う顧客流出が影響している。

 今冬の道内は、供給のゆとりを示す予備率が14・1%と、安定供給に最低限必要とされる3%を大きく上回った。国の認可法人、電力広域的運営推進機関(東京)が公表する供給計画では、18〜27年度の道内の予備率は、需要が多い1月でも15〜27%の確保が可能。石狩湾新港で建設中の液化天然ガス(LNG)火力発電所2号機が稼働する26年度以降は27%に上昇する見通しだ。これには泊原発からの供給は見込んでおらず、再稼働すれば電力の余剰感はさらに強まりかねない。

 四国電力は福島第1原発事故前に総発電量の4割を原発で賄っていた。同社によると、電力需要の減少や、火力発電所(火発)の燃料を石油からLNGに転換するなどして「供給力は確保できる」(広報担当者)という。

 北電の真弓明彦社長は4月27日の会見で、四国電力との違いについて「(北電は)老朽化した火発を持っており、各社で事情は違う」と強調した。だが、四国電力の火発11基のうち運転開始から40年以上たつのは8基で、12基中4基の北電より多い。

 これまで廃炉を決めた電力会社は関西電力など経営規模の大きな会社が多かったため、北電幹部は「経営規模が異なるので参考にならない」としてきた。ただ、監督官庁経済産業省内からも「電力不足の恐れを前面に出して、原発の必要性を訴えるのは限界がある」との指摘が出ている。