国旗国歌衆院通過の日(99.7.22)の「天声人語」全文

国旗国歌衆院通過の日(99.7.22)の「天声人語」全文




 秋田市の中学校総合体育大会が、6月下旬の3日間催された。初日の開会式には24中学校の生徒1万人、先生500人が参加した。観客席に150〜200人の父母らもいた。
 開会宣言に続き、日の丸が掲揚され、君が代が斉唱された。優勝旗返還などのあと、高橋昌一・秋田市体育協会会長(69)の祝辞の番になった。冒頭、会長は言った。「これから来賓として祝辞を述べる前に注意しておきたい。国旗掲揚、国歌斉唱のとき座っていた人は出て行っていただきたい」。
 数人の父母らが席を立った。しかし、ことばに応じなかった人もいたという。高橋氏は酒造会社の社長で、秋田県議(自民党)を3期務めた経歴の持ち主だ。電話して、その思うところを聞いてみた。「発言を撤回するつもりはない」。淡々と氏は語った。
 「厳粛なセレモニーのとき、きちんとしていた子どもたちの前で、起立しない大人たちがいた。国旗、国歌へのあるべき認識からかけ離れた、常識のない人たちだ。こういう礼を欠いた、貧しい心が、世の中の荒廃につながる」「国旗・国歌法案に尊重規定が盛り込まれればもっとよかったのだが、いまの法案であっても、成立すれば、尊重しなければならないものだという認識は深まるでしょう」。
 常識がない、心が貧しい――これと同類で、もっと強い調子の発言を読んだ覚えがある。国旗・国歌法案が提出された当日、森喜朗自民党幹事長は語ったのだった。「日の丸は軍国主義だとか、君が代天皇崇拝の歌だとか言われた時期もある。しかし、戦後50年以上が過ぎた今、そんなことを言うのは、特定の思想の持ち主しかいない」(6月12日付毎日新聞)。
 国旗、国歌を強制する趣旨の法案では決してない、と説きながら、一方で、賛成しない人びとに向かって「出て行け」という。そうした言動が増殖している。