次世代原子炉の輸出検討 政府、ポーランドに
2017/9/17 2:00日本経済新聞 電子版
政府はインフラ輸出戦略の一環として、より安全性が高いとされる次世代原子炉「高温ガス炉」(HTGR)の輸出の検討に入った。新たなエネルギー源として高温ガス炉の導入を計画するポーランドが輸出先の候補になっており、月内にも日本側の意向を伝える。ポーランドは約20基の導入を検討中で、受注すれば規模は1兆円を超える。
日本は官民を挙げて受注を目指す方針で、日立製作所、三菱重工業、富士電機など関連技術を持つ企業にも協力を呼びかける。日本では日本原子力研究開発機構が高温ガス炉の研究開発を進める。実験炉で商用炉はまだない。ポーランド側には実験炉の技術をもとに、商用炉の開発・輸出を念頭においた技術協力を申し入れる。
関係者によると、ポーランド側では日本の技術力への関心が高い。ただ日本の対応が鈍ければ中国に発注する可能性も示唆しているという。
これまで実験炉を持つ日本の技術が最も進んでいるとされてきたが、米国や中国、韓国などが積極的に開発を進めており、日本の優位性が薄れる可能性はある。2015年にはインドネシアでの高温ガス炉の実験炉の国際入札をロシアと争って敗れた。政府はポーランドとの共同開発を通じ技術力の維持や向上も狙う。
高温ガス炉は従来の原子炉と異なり、安全性が高いとされる。冷却剤に主流の原子炉が水を使うのと異なり、ヘリウムガスを用いるため化学反応や蒸発は生じず、水素・水蒸気爆発も起こらない。燃料や原子炉の特性から仮に冷却できなくなっても炉心溶融は起こらない設計という。11年の東京電力の福島第1原発事故では、津波で非常電源を失って冷却水を循環できなくなり炉心溶融などにつながった。
二酸化炭素(CO2)をほぼ排出しない技術として温暖化対策の観点からも注目される。ポーランドは現在、エネルギーの大半を石炭火力発電に依存する。地球温暖化対策の新枠組み「パリ協定」をにらみ、CO2を排出しない高温ガス炉へ切り替える計画を決めた。