社説 米韓防護

米艦防護 軍事協力傾斜は危うい 

2017/05/02  北海道新聞


 安全保障法制に基づく新任務で初めて実際の運用となる「米艦防護」がきのう、海上自衛隊護衛艦と米補給艦が合流し始まった。周辺を警戒監視しながら2日ほどで太平洋を四国沖まで航行する。
 核・ミサイル開発を進める北朝鮮に軍事的圧力を強めている米国を支援し、日米同盟の結束をアピールする思惑があるのだろう。
 北朝鮮は先月末にまたも弾道ミサイルを発射した。失敗に終わったとみられるが、国際社会の警告を無視した挑発はもちろん、絶対に正当化できない暴挙である。
 だが、米朝緊張のさなかに自衛隊と米軍の一体運用を加速させれば、偶発的な衝突の危険が増す。
 日本が取るべき道は軍事面で米国に追随することではない。米国に自制を促し、平和解決に向けた行動の先頭に立つことである。
 他国軍の武器・弾薬などを、自衛隊が平時や武力攻撃に至らないグレーゾーン事態で守るのが「武器等防護」だ。中でも朝鮮半島有事をにらんだ米艦の防護は、米側の強い要請があるとされてきた。
 日米両政府は、まず危険が少ない四国沖までの航行で安保法の実績作りを狙った側面もあろう。現在の緊迫した情勢なら世論の支持を得やすいとみた可能性がある。
 だが、この任務が広がれば、自衛隊のリスクは確実に高まる。
 自衛隊は「合理的に必要と判断される限度」で武器を使用できるが、限度の線引きは難しい。
 米艦への偶発的、威嚇的攻撃に自衛隊が応戦すれば全面衝突に発展する懸念が指摘されてきた。
 実施は基本的に米国などの要請を受け防衛相の判断で決める。重大任務なのに国会の関与をほとんど前提としていないのも問題だ。
 いま、米側が過度の威嚇をすれば北朝鮮が先制攻撃を受けるのではという疑心暗鬼に陥り、暴発しかねないリスクがささやかれる。
 そうした事態を避けながら北朝鮮に対する制裁包囲網を強め、いかに対話の場に引き出すか。国際社会が総力を挙げて外交手段を尽くさなければならない。
 ところがどうだ。安倍晋三首相は北朝鮮の核問題を巡る6カ国協議の現時点での再開について「対話のための対話は何の解決にもつながらない」と全面否定した。
 無論、北朝鮮の核保有を前提とする話し合いには応じられないが、はなから対話の糸口を断つような物言いはいかがなものか。
 日米の行動が、緊張を高めるだけの「圧力のための圧力」であってはならない。

海自「米艦防護」 双方向の協力で同盟を強固に

2017年05月02日 読売新聞


 自衛隊が米軍を守る新任務に就いた。日米同盟の強化に向け、重要かつ象徴的な動きである。
 政府は、昨年3月施行の安全保障関連法に基づき、海上自衛隊艦船が平時に米軍艦船を守る「米艦防護」を初めて実施した。
 ヘリコプター搭載型の海自護衛艦「いずも」が、房総半島沖で米海軍補給艦と合流し、四国沖まで共に航行する数日間、警護する。補給艦はその後、日本海米原子力空母「カール・ビンソン」などに給油する可能性がある。
 今回の米艦防護は、米軍の要請を受けて、稲田防衛相が「共同訓練」として実施を命令した。昨年12月策定の「武器等防護」に関する運用指針に沿ったものだ。
 北朝鮮の軍事的挑発が続く中、日米の強固な絆を示すことで、抑止を図る効果を持とう。
 補給艦は本格的な反撃能力を有しない。敵の攻撃には、防空システムなどを持つ「いずも」が対処する。太平洋で米艦が攻撃される可能性は小さいが、緊張感を持って任務に臨んでほしい。
 従来、米軍艦船が目の前で攻撃されても、自衛隊は法律上、何もできなかった。2001年の米同時テロ直後、米空母の警護を要請された際は、調査・研究の名目で対応する苦肉の策を講じた。
 安保関連法によって、米艦防護が可能になり、こうした矛盾を解消できた意義は大きい。
 日米安保条約上、米国は日本防衛の義務を有する。日本は米軍基地を提供し、米国防衛は行わない。片務的ではないにせよ、この非対称の関係が、日本は何もしないという米側の不満の要因だった。
 今後、防御が手薄な空母や、ミサイル迎撃態勢にあるイージス艦などの防護要請も想定される。
 実績を着実に重ね、双方向の協力を充実させるべきだ。
 自衛隊が役割を拡大し、非対称の関係を是正すれば、米軍が対日防衛により真剣に取り組むことにつながる。日本の発言力を高め、日米連携も緊密化しよう。
 疑問なのは、一部の野党が米艦防護を「米軍との一体化」などと批判していることだ。
 日本近海で活動する米軍艦船は基本的に、日本や地域の平和と安定を維持する任務を担っている。同盟国として、その米軍艦船を十分に守れる能力を持ちながら、法律上の制約で実行できなかった従来の状況こそが問題だった。
 米艦防護を通常の任務として円滑に実施できる同盟関係を構築することが肝要である。