理事長らの国会招致が必要だ
2017/3/10付 日本経済新聞社説
大阪府豊中市の国有地が学校法人「森友学園」に評価額より大幅に安く売却された問題で、野党が関係者の国会招致を求めている。連日の審議でも疑問がすべて解消したとはいえない。与党は取引の経緯や政治家の関与の解明に向けて招致に同意すべきだ。
民進、共産、自由、社民の野党4党は、学園の籠池泰典理事長、当時の財務省理財局長ら6人の参考人招致を要求した。日本維新の会の松井一郎代表(大阪府知事)も招致が必要だと発言している。
一方、与党は「民間人であり慎重な対応が必要だ。違法性は確認されていない」と拒んでいる。
森友学園は小学校の建設用地として9千平方メートル近い国有地を1億3400万円で購入した。不動産鑑定士の評価額は9億5600万円で、地中のごみ撤去費用として8億円強を減額した。国有地の売却は高い透明性と公平性が求められる。学園と近畿財務局の交渉記録は残っておらず、政府のこれまでの説明では不十分だ。
まず知りたいのは売却価格を大きく下げる根拠となったごみ撤去費用の算定方法の妥当性だ。国民の大切な財産を、外部の見積もり無しで売却した判断は正しかったのか。学園が国や大阪府に提出した書類で校舎の建築費用が食い違っている問題も明らかになった。
学園から働きかけを受けた政治家は、自民党の鴻池祥肇参院議員や大阪維新の会の府議のほかに本当にいないのか。学園は「安倍晋三記念小学校」の名称で寄付を募り、首相の昭恵夫人を「名誉校長」として紹介していた。様々な疑惑の真相を究明するのは国会の重要な役割である。
政府は8日、学園が運営する幼稚園で昭恵夫人が2015年に講演した際に同行した政府職員に関して「私的活動」との国会答弁を「公務だった」と訂正した。首相夫人の行動は公私を問わず注目を集める。権力を利用しようと近づいてくる個人や団体も多く、言動が責任を伴うことへの自覚がどれだけあったのか疑問が残る。
2017年03月09日 読売新聞社説
学園理事長の教育者としての資質が問われる事態になりつつある。
学校法人「森友学園」が大阪府に提出した、豊中市に建設中の小学校の設置認可申請を巡る資料に、事実と異なる点が次々と発覚した。資料には、校舎などの建築費に関し、国土交通省への補助金申請書類と異なる金額を記載した契約書が含まれる。府には「7億5600万円」、国交省には「23億8400万円」と報告していた。
別の金額の契約書も、大阪空港の運営会社に提出された。
学園側は、建築費の増額分を見込んで申請したというが、より多くの補助金を受け取るために虚偽の契約書を提出したのなら、学校法人としてあるまじき行為だ。
資料は、愛知県の私立中高一貫校の推薦入学枠を確保したとも記載していた。相手校が「事実無根」と否定すると、ミスを認めた。
松井一郎府知事は学園側の姿勢に不信感を募らせている。府は申請内容を精査し、設置の不認可も検討する。当然の対応だろう。
国会で野党は、森友学園の問題で政府を追及している。
小学校用地の国有地が評価額を8億円余も下回る価格で学園に売却されたことについて、財務省などは、国有地内のゴミ撤去費用を差し引いたと説明する。
現地調査を踏まえ、公共事業に使用される積算基準に基づき、ゴミの処分量と作業単価から国交省大阪航空局が算出したという。
膨大な廃棄物が埋まった土地である以上、売却価格の減額は正当であり、政治家の関与はなかった、という見解は理解できる。
自民党の鴻池祥肇・元防災相は森友学園の籠池泰典理事長から、財務省への働きかけを要請され、謝礼を渡されそうになったことを明らかにした。ただ、仲介については明確に否定している。野党は、衆参両院予算委員会での籠池氏の参考人招致を求めているが、狙いはどこにあるのか。
首相夫人の安倍昭恵氏と森友学園との関係も、国会審議の焦点の一つとなっている。
昭恵氏は、問題の小学校のホームページに名誉校長として高く評価する挨拶文が掲載された。2014年12月と15年9月には、学園の運営する幼稚園で講演し、政府職員も同行している。
首相夫人は政府の公式行事や外交活動に参加する機会が多く、その発言の影響力は大きい。単なる「私人」では済まされない。そのことを自覚し、より慎重な振る舞いに努めねばならない。