拙速なカジノ解禁は問題多い
2016/12/3 日本経済新聞
刑法の賭博罪にあたるため国内で認められていないカジノの解禁に道を開く法案がきのう、衆院の内閣委員会で可決された。自民党や日本維新の会、公明党の一部議員による賛成多数で、自民党は今国会での成立を目指している。
法案の審議が始まったのは今国会が終盤を迎えた、つい3日前のことだ。カジノには国民の間に根強い反対論や拒否感があり、これまで審議できずにいた。それを突然持ち出し、まともな議論もないままなし崩し的に解禁しようとする議員たちの見識を疑う。
カジノには、ギャンブル依存症の増加や暴力団など反社会的勢力の介入、マネーロンダリング(資金洗浄)の懸念といった様々な負の側面が指摘されている。
海外の事例を含め、こうしたマイナス面の検証や具体的な防止策の検討が不可欠なのに、付帯決議で先送りにされた。是非を判断する材料を欠いたままの拙速な審議は、許されない。
合法化を推進する立場の自民党などは、外国人観光客が増え地方の経済が活性化するといった効果を主張する。だがこの点も冷静に議論してみる必要がある。たとえばマカオのカジノは中国当局による腐敗取り締まりなどの影響で、主な顧客だった中国人富裕層が大きく減っているという。
法案が描く構想では、国内のいくつかの地区にカジノやホテル、商業施設、国際会議場などが一体となって立ち並ぶ統合型リゾート(IR)が誕生することになる。
日本各地で大規模なリゾート開発を進めた末に多くが破綻した、かつての総合保養地域整備法(リゾート法)の二の舞いになる心配はないだろうか。地方では、競馬や競輪などの公営ギャンブルも低迷しているのが現状だ。
高齢化や人口減が進むなか、疲弊した経済を立て直すきっかけにしたいという自治体などの思いは分かる。そうであればなおさら、カジノ事業を黒字にできるのかどうか、慎重に検討する必要があるだろう。