明治時代に制定されたこの悪法が廃止されたのは、約1世紀後の1997年だった。北海道旧土人保護法。名目は明治政府が進めた北海道開拓で生活の場を奪われたアイヌ民族を救済すること。実際は先住民を日本国民に同化させることが狙いだった

 明治時代に制定されたこの悪法が廃止されたのは、約1世紀後の1997年だった。北海道旧土人保護法。名目は明治政府が進めた北海道開拓で生活の場を奪われたアイヌ民族を救済すること。実際は先住民を日本国民に同化させることが狙いだった

▼土地を与えて農業を奨励したが、耕作に不向きな土地が多かった上、狩猟や漁業をなりわいとした人々だけに、農耕に失敗し土地を取り上げられる事例が後を絶たなかったという

▼一方で、日本語の使用や日本風の氏名への改名を強制され、アイヌ語や独自の文化、風習は否定された。その結果、保護どころか、アイヌ民族の困窮と差別を助長することになった

▼「旧土人」の名称からして、アイヌ民族をおとしめ、存在を否定するように聞こえる。関係者の長年の努力で、全ての差別の撤廃を目指す「アイヌ文化振興法」が同年、旧法に代わって成立した

▼過去の遺物の差別語がよみがえるとは。「ボケ、土人が」。ニュースから流れた言葉に耳を疑った。米軍基地建設に反対する沖縄の市民に、警備の応援で来ていた大阪府警の機動隊員が投げつけた罵声だ

▼沖縄を見下す気持ちか。国策に逆らう“非国民”と映ったか。個人の非常識を責めるより、若い隊員に暴言を吐かせた背景は何かを問いたい。戦争で多大な犠牲を強いられた沖縄に今なお負担を押し付ける国策の底流に、「差別」が潜んではいないか。

=2016/10/22付 西日本新聞朝刊=