社説 伊方原発

(社説)伊方原発 またも見切り発車か
2016年8月13日 朝日新聞




 愛媛県伊方(いかた)町の四国電力伊方原発3号機がきのう再稼働した。新規制基準のもとでは、九州電力川内(せんだい)1、2号機(鹿児島県)と関西電力高浜3、4号機(福井県)の計4基に続く。

 高浜は大津地裁の仮処分で停止しており、プルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料を使うプルサーマル発電としてログイン前の続きは、唯一の稼働となる。

 しかし川内や高浜で指摘された多くの課題は伊方でも積み残されたままだ。再稼働は見切り発車であり、賛同できない。

 伊方で特に問題視されるのは、万一の際に周辺住民がスムーズに避難できるかだ。

 伊方原発は東西40キロ、最大幅6キロ程度の細長い佐田岬(さだみさき)半島の付け根にあり、原発の西に約5千人が暮らす。原発のそばを経て内陸部へ通じる国道が命綱だ。周辺自治体と国がまとめた避難計画では、国道が通れなければ半島の港から主に船舶で避難することになっている。

 だが、多くの集落は海ぎわの傾斜地にあり、土砂災害で孤立する恐れがある。伊方町内には放射線防護対策を施した施設が7カ所あるが、うち4カ所は土砂災害警戒区域にある。

 町民の4割超は65歳以上だ。町は地区ごとに避難支援態勢を練っているが、町民からは「複数の災害が重なれば、どうしようもない」との声が聞かれる。

 原発から5〜30キロ圏の住民は自宅や公共施設への屋内退避が原則だ。だが2回の震度7で建物に大きな被害が出た熊本地震が、複合災害の脅威を突き付けた。愛媛県南海トラフ地震などで強い揺れが予想されるが、防災拠点となる公共施設の耐震化率は全国ワースト3だ。

 避難計画は原発の単独事故が主な想定だ。地震や土砂災害の同時発生もより深く考慮し、それでも住民の安全を守れるかを検証するのは最低限の責務だ。

 先月就任した三反園訓(みたぞのさとし)・鹿児島県知事は、熊本地震後の県民の不安に応えるとして、九電に川内原発の運転停止を求める意向だ。新たな懸念材料が出ているのに、四電が再稼働に踏み切ったのは残念だ。

 使用済み核燃料も問題だ。3号機に加え、2号機も動かせば燃料プールは6〜7年で満杯になるが、新貯蔵施設の建設はめどが立たない。使用済みMOX燃料は再処理のあてもない。

 電力需給は今夏も余裕がある。四電は年250億円の収益増を見込むが、いま再稼働する理由としての説得力は乏しい。

 電力会社や国、自治体は、課題にほおかむりしたままの原発再稼働はもうやめるべきだ。

伊方原発再稼働 電力の安定供給に寄与する

2016年08月14日 読売新聞




 電力の安定供給に欠かせない。確実に営業運転させる必要がある。

 四国電力伊方原子力発電所3号機が、5年4か月ぶりに再稼働した。15日にも発電を始め、来月、営業運転に入る予定だ。

 昨年7月、原子力規制委員会の安全審査に合格した。福島第一原発事故を踏まえて厳格化された新規制基準に基づくものだ。10月には、立地する愛媛県伊方町が再稼働に同意し、規制委による使用前検査が行われてきた。

 新規制基準に合格した原発の再稼働は、九州電力川内原発1、2号機と関西電力高浜原発3、4号機に続き、3か所目となる。

 ただ、川内原発は10月から、定期検査のために順次止まる。高浜原発は裁判所の仮処分決定により運転停止に追い込まれている。年内には、伊方3号機が運転中の唯一の原発となる可能性がある。

 四電は、再び「原発ゼロ」に陥ることがないよう、安定した稼働を実現してもらいたい。

 伊方3号機では「プルサーマル」が実施される。使用済み核燃料を再処理して取り出したプルトニウムにウランを混ぜたMOX燃料を使用する。ウラン資源の有効活用につながる核燃料サイクルが再び動き出す一歩となる。

 本格稼働すれば、年250億円相当の化石燃料が節減できる。電気料金の値上げでしのいできた四電の経営改善や、温室効果ガス削減などに寄与するだろう。

 無論、四電は、安全性向上への取り組みを緩めてはならない。

 伊方3号機の間近には中央構造線断層帯が走ることから、地震時の影響が指摘されてきた。細長い岬に立地しているため、重大事態が発生した際に、住民の避難が混乱するという声もある。

 四電は、断層帯約500キロ・メートルが動くとの想定で設備の耐震性を強化し、非常用電源も拡充した。対策費は1700億円に上る。

 愛媛県は、船舶で対岸の大分県に避難する計画を策定している。訓練を重ね、不十分な点は柔軟に見直すことが大切である。

 懸念されるのは、司法判断による運転停止だ。反原発派の住民らが、広島、松山、大分各地裁に、伊方3号機の運転差し止めを求める仮処分を申し立てている。

 高浜原発の運転を差し止めた大津地裁の決定は、非現実的なゼロリスクへの固執が際立った。

 再稼働は、規制委の厳しい審査を経ている。司法の不合理な判断で、これ以上、国のエネルギー政策を混乱させてはなるまい。