原発回帰さらに 福島の現実見えているか

原発回帰さらに 福島の現実見えているか





 東京電力福島第1原発事故から6度目のお盆を迎えた。

 ふるさとに思いをはせながら、今年も避難先で過ごさざるを得ない人は多いに違いない。

 ところが、国のエネルギー政策は脱原発どころか、原発回帰の動きが一層強まっている。

 愛媛県にある四国電力伊方原発3号機が再稼働した。15日に発電と送電を始め、9月上旬には営業運転に入る見込みだ。

 福島事故を受け原子力規制委員会が定めた新規制基準の下では九州電力川内1、2号機(鹿児島県)、関西電力高浜3、4号機(福井県)に続き5基目となる。

 伊方3号機はプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料によるプルサーマル発電が特徴だ。

 高浜3、4号機は司法判断で運転差し止め中のため、国内唯一のプルサーマル発電となる。

 不安要素は少なくない。

 伊方原発敷地の北6〜8キロの瀬戸内海海底には、政府の地震調査委員会がマグニチュード8級の地震が起こり得ると推定する日本最大規模の活断層中央構造線断層帯」が走っているからだ。

 この断層帯震度7を2回観測した熊本地震震源域の延長線上にある。16世紀には九州から四国、近畿へと大地震が続いた記録があり、影響が及ぶのではないかとの不安はくすぶり続けている。

 四国電力は安全性に支障はないと強調している。ただ、専門家の中には地震の想定が不十分との指摘がある。「想定外」はもう許されないと認識するべきだろう。

 半島の付け根にある伊方原発の場合、原発より半島の先に住む住民約5千人の避難も課題だ。

 地震原発事故の複合災害が起きた場合、孤立の恐れがある。どこまで住民の安全を確保できるのか、現状では甚だ疑問と言わざるを得ない。

 伊方原発再稼働を前にした今月初め、原子力規制委は、運転開始から40年の法定寿命が近づく関西電力美浜3号機(福井県)について事実上の審査合格を出した。

 運転の延長が認められた老朽原発は高浜1、2号機に続いて2例目となる。

 運転延長は「例外中の例外」とし、原発の運転期間を「原則40年」と定めたルールは、早くも形骸化してきたと言っていい。

 原発の新増設の議論が活発化する可能性も出てきた。

 中国電力上関原発建設に必要な海の埋め立て免許の延長申請を、山口県が許可した。

 上関原発は2009年4月に準備着工が始まったが、福島事故で中断し、県も許可判断を見送ってきた経緯がある。安倍政権の原発活用路線が、方針転換の背景にあるとみられている。

 原発をめぐるこれらの動きを見ると、福島の過酷事故を忘れたのではないかとの懸念が拭えない。

 南相馬市の一部に出ていた避難指示が解除されて1カ月になる。だが、戻って来たのは約1万人のうち約400人にすぎない。事故の収束と廃炉への確かな道筋が描けない中、当然だろう。

 福島の現実は見えているのか。


【社説】 2016/08/14 新潟日報