東京五輪招致疑惑

東京五輪招致疑惑


2016年5月25日 宮崎日日新聞


◆不透明な金の流れ説明せよ◆

 2020年の東京五輪招致に関し、国内外から疑いの目が向けられている。東京の招致委員会から、シンガポールの会社経営者の銀行口座に計約2億2千万円が振り込まれていた。この経営者の友人とされる人物は、国際陸上連盟会長(当時)の息子である。この金の流れは何を意味するのか。

 東京五輪に関しては、新国立競技場の建設や大会エンブレムの選定を巡って問題が続いた。今回はその招致の過程に疑惑が生じ、東京五輪の根底が揺らいでいると言える。このままでは国民は晴れやかな気持ちで4年後を迎えられない。徹底調査と説明を望みたい。

説得力ない「正当性」

 五輪招致では、投票権を持つ国際オリンピック委員会(IOC)委員に関する情報収集や、票読みに当たるコンサルタントが今や不可欠なのだという。

 今回の件に関し日本オリンピック委員会(JOC)は必要なコンサルタント契約だったと正当性を主張しているが、守秘義務を盾に契約の詳細などの説明を避けており、説得力はない。

 疑惑を招いている人物は、ロシア陸上選手のドーピング違反のもみ消し工作を仕掛けた疑いがあり、重大な倫理規定違反があったとして、国際陸連から永久追放処分になっている。

 フランスの検察当局は、ロシアのドーピング違反に絡む収賄や贈賄などの疑惑を捜査中、もみ消し工作で使われた疑いのあるシンガポールの口座が「東京五輪招致」の名目でも利用されていたことを把握。「第2の事件」として捜査を始めた。招致に携わった関係者は捜査へ全面的に協力すべきだ。

 人物の父親は当時、国際陸連会長で、IOC委員でもあった。コンサルタント契約自体、この父親が持っていた影響力に期待したものだったのではないか-とみられても不思議ではない。疑念を晴らすには、最大限の情報公開をするしかないだろう。

世界から厳しい視線

 そもそもコンサルタント料の高額さは庶民の感覚では理解できない。不透明な金の流れは、健全なスポーツの祭典に似合わない。

 IOCは3年前のバッハ会長就任後、五輪の開催も招致も金のかからないものにしようと強く呼び掛け、倫理的に問題のある行為を招致活動から一掃すると強調。

 倫理・コンプライアンス室や通報窓口を設け、不正の摘発と防止に取り組み始めた。行き過ぎた集票活動などによって、五輪のイメージが傷つくことがあってはならないとの危機感の表れだ。

 今回、「行き過ぎた活動」はなかったか。真相が解明されなければ、東京五輪を目指して努力を続けているスポーツ選手や、楽しみにしている国民の心に暗い影を落としたままとなる。

 JOCは独自の調査チームを設置する。世界から厳しい視線が注がれていることを肝に銘じ、徹底した調査をすべきだ。