<小出裕章さんに聞く>日本のメーカーはなぜ原発にこだわり続けるのか

小出裕章さんに聞く>日本のメーカーはなぜ原発にこだわり続けるのか

アジアプレス・ネットワーク 2016年2月6日(土)11時0分配信




東芝の不正会計事件の背景には、この企業の原発部門の収益悪化があると言われている。世界的に原子力発電が見直されている中で、日本のメーカーは今も原発にこだわり続け、いつの間にか世界的なプラントメーカーと目されるまでになっている。この問題について、元京都大学原子炉実験所・助教小出裕章さんに聞いた。(ラジオフォーラム)



小出裕章さんに聞く>日本のメーカーはなぜ原発にこだわり続けるのか


ラジオフォーラムの収録で語る小出裕章さん


◆米国メーカーを買収してまで

ラジオフォーラム(以下R):日本では東芝、日立、三菱重工の3社が、原子力事業の中核会社であり、俗に言われるプラントメーカーと見なされています。世界的には原子力事業は採算性がよくないと言われ、この分野から撤退する大手企業が多くある中で、日本のメーカーは今も原発に執着しています。なぜこれほどまで原発にこだわるのでしょうか。

小出:日本には2つの形の原子力発電所がこれまで動いてきました。ひとつは東京電力が使っていて、福島第一原子力発電所の原子炉もそうだったのですが、沸騰水型と呼ばれている原子炉です。もうひとつは関西電力が使っている加圧水型という原子力発電所があるのです。どちらも米国で開発された原子炉で、沸騰水型の方はゼネラル・エレクトリック、加圧水型の方はウエスティングハウスという巨大メーカーが開発したものだったのです。

R:東日本が沸騰水型、西日本の多くが加圧水型になっていますね。

小出:日本では、加圧水型の方は三菱が引き受ける。そして沸騰水型の方は日立と東芝が引き受けるという形でこれまでやってきました。日本では沸騰水型と加圧水型がほとんど同数できたのですが、世界全体を見ると加圧水型の方が圧倒的に優勢だったのです。そういう状況をずっと見てきた東芝が2006年になりまして、このままゼネラル・エレクトリックと結びついて沸騰水型を続けていると、海外に売り込むことができないと考えたわけです。

R:要するにもう日本ではこれ以上、原発の数を増やすのが難しいので、海外にマーケットを求めないといけないというような計算もやはりあったということなのでしょうか。

小出:もちろんです。1970年から敦賀、美浜というように沸騰水型と加圧水型の原子力発電所ができたのですが、毎年、三菱が加圧水型を、日立と東芝が1年交代で沸騰水型を一基ずつ造っていくというペースで1990年ぐらいまでは来ました。しかし、それ以降は日本の中で新たに原子力発電所を作ることができないということがわかってしまいまして、建設できる原子炉の数もどんどん減ってきてしまったのです。そこで、とにかく海外に売り込まなければいけないということで、三菱も日立も東芝も頭を捻っていたわけですが、東芝が2006年に奇策に打って出ました。沸騰水型をこのまま続けていてもダメなので、加圧水型を海外に売りつけたいと思ったのです。それでどうしたかと言うと、加圧水型を造ってきた米国のウエスティングハウスという巨大なメーカーを丸ごと買収してしまうということをやったのです。

それまでウエスティングハウスと結び付いていたのは三菱だったわけですけれども、三菱はそのおかげで弾き出されてしまいまして、仕方がなくてヨーロッパの加圧水型メーカーであるアレバという会社とくっついて、世界に売り込みを図ろうという形になったのです。

2006年の頃は、日本では原子力立国計画なんていう計画を作り、一度は停滞した原子力を国主導で復活させようとしていました。東芝はウエスティングハウスと結び付くことで、とにかく金儲けができると思ってしまったのです。しかし残念ながら、世界ではあまり原子炉の数が増えませんし、福島第一原子力発電所の事故が起きてしまいましたので、もうほとんど海外に原子炉を売るということすらできなくなってしまって、東芝原子力部門で大幅な赤字というのを抱えてしまいました。それを粉飾決算でなんとか言い逃れようとしたわけですけれども、それが発覚して苦境に陥っているということです。

R:なるほど。世界的に見て、原子力事業から撤退する会社が多々ある中で、日本勢は世界の原発の勢力図から見ていくと、今や最大勢力になりつつあるのですね。なぜ日本の原子力関連会社がそこまで原発に執着するのか不思議です。しかも、福島でこれほど大きな事故を起こしているというのに。

小出:米国という国が、世界の原子力を牽引してきました。ゼネラル・エレクトリックとウエスティングハウスなのですが、その米国ではもう四半世紀以上にわたって新しい原子力発電所の建設がないということで、GEもウエスティングハウスも生産ラインを全てもう失ってしまっているのです。

R:もう何もないのですか。

小出:そうです。ですからGEやウエスティングハウスが原子力で金儲けをしようと思うと、日本を使って実物を造って売り込んで、パテント(特許)を握って儲けるという方法しかないわけで、米国が日本を逃がしてくれないという構図があるのだろうと思います。

R:ただですね、そういう背景には、安倍総理大臣自らがトップセールスをかけて、海外に原発を売り込んでいることがあります。やはりそういう国策というものが、原発関連事業の大手3社を後押ししている部分もあるのでしょうか。

小出:当然あります。日本では、原子力発電というのは平和利用と言われてきていますが、実は日本の国というのは、平和利用と言いながら、核兵器を造る潜在的な能力を持ちたいがために、原子力発電をやり続けてきたわけです。今でも原子力を放棄してしまうと、核兵器を持つという点でマイナスになってしまうので、原子力は放棄できないというようなことを自民党の首脳たちがいまだに言っている。つまり、原子力からもう抜けることはできないと思っているわけです。
そして、安倍さんはとにかく経済最優先ということで、金儲けと言っているわけですから、原子力も使って金儲けをしたいということになっているわけです。