安倍政権批判の文言入り文具、有無を調査 北海道の学校

安倍政権批判の文言入り文具、有無を調査 北海道の学校

2015/10/17 朝日新聞



 北海道教育委員会が、安倍政権を批判する文言を記した文房具が学校内にあるかどうかについて、道内の公立学校を対象に調査を始めたことが分かった。一部の高校にあったことから、「教育の政治的中立性」を保つためとしている。文房具を配った教職員組合側は「学校現場を萎縮させる」などとして反発している。

 自民党道議が9月、一部の学校で「アベ政治を許さない」との文言が印刷されたクリアファイルが教師の机の上に置かれていると指摘し、調査を要求。道教委は今月14日付で、政令指定市の札幌市立以外の小中高校など1681校に調査票を配った。

 質問内容は、いつ誰が使ったり配布したりしたか、校内のどこで見たかなど。回答は任意だが、関わった人の名前を記すよう求めている。管理職には、関わった教職員が特定できれば指導するよう求めた。

 道教委は、クリアファイルの配布が教職員に禁じられた政治的行為のうち「特定の内閣を支持またはこれに反対すること」(人事院規則)に当たる可能性があるとみている。机上に置くことは人事院規則違反ではないものの、「児童生徒らの目に触れ、誤解される恐れがある」と問題視している。

 北海道高等学校教職員組合連合会(札幌市中央区)はクリアファイルの作製を認めた上で、「組合活動として組合員だけに配った。校内での掲示や配布は指示していない」と説明。道教委に対し、15日付で調査中止を求めた。

 クリアファイルにある文言は、俳人金子兜太さんが揮毫(きごう)。各地の市民集会などで、プラカードやポスターなどに使われている。

 道内の市教委の男性職員は「こんな調査は初めて。クリアファイルを持っていたら法令違反なのか」と戸惑う。50代の男性教員は「調査には驚いた。まるで監視社会だ」と話した。(花野雄太、松本理恵子、青木美希)

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 〈広田照幸・日大教授(教育社会学)の話〉 教育委員会はまず、禁じられる政治的行為の例を教職員に周知するべきで、今回の件に関わった人の氏名まで報告させる調査は不適切だ。選挙権年齢の引き下げに伴い、主権者教育を進めるためには、教員自身が社会に関心や知識を持つことがより必要になる。このような調査は、現場を萎縮させ、ものを考えない教員を増やしてしまう恐れがある。