国連の福島県民健康報告書 がん増加「予想せず」

国連の福島県民健康報告書 がん増加「予想せず」

原発事故 放射線影響小さく



 【ウィーン共同】国連放射線影響科学委員会(事務局ウィーン)は2日、東京電力福島第1原発事故の健康への影響に関する最終報告書を公表した。事故の放射線によるがん発症率への影響は小さく、福島県での明確ながんの増加は「予想していない」と結論付けた。

 一方、原発の周辺住民の甲状腺被ばく線量(等価線量)は、被ばくの影響を受けやすい1歳児が事故後1年間で最大約80ミリシーベルトと推定。同委員会のワイス福島第1原発事故評価議長は、「甲状腺がんになる危険性は低いが、今後継続的な検診が必要だ」と話した。

■がんと事故の因果関係 県民健康調査でも「影響考えにくい」

 県と福島医大が全県民を対象に実施している県民健康調査の検討委員会(星北斗座長)は2月、甲状腺がん原発事故との因果関係について「放射線の影響をきちんと検証する必要があるが、これまでの科学的知見から現時点で影響は考えにくい」との見解を示している。
 県民健康調査のうち、原発事故発生時18歳以下の約37万人を対象にした甲状腺検査では昨年12月現在、甲状腺がんが確定、あるいは疑いがある受診者が合わせて75人。内訳はがん確定が33人、がんの疑い41人、手術で「良性」と判明した1人となっている。
 75人のうち、24人は外部被ばく線量を推計するための問診票による基本調査に回答しており、事故発生後4カ月間の外部被ばく線量は15人が1ミリシーベルト未満、9人が1ミリシーベルト以上2ミリシーベルト未満と推計されている。
 県民健康調査をめぐっては、問診票による基本調査の回答率が昨年12月末時点で25%にとどまっている。
 県は新年度から県民健康管理調査を県民健康調査に改称している。

(2014/04/03 福島民報