原発依存か、脱原発か:【基礎知識】原発のごみの捨て場所はあるのか?

原発依存か、脱原発か:【基礎知識】原発のごみの捨て場所はあるのか?
2014年01月31日  毎日新聞




 ◇最終処分場のある国、ない国

 原発から出るごみは、大きく分けて2つある。一つは使用済み核燃料、もう一つは廃炉によって生じる廃棄物だ。日本にとっては、目下どちらも喫緊の課題である。

 発電に使ったあとの燃えかすである高レベル放射性廃棄物は、ガラス原料と一緒に高温で溶かしてステンレス容器に入れたもの(ガラス固化体)を、地下300mを超す深い場所に埋める、いわゆる「地層処分」が最適とされている。もっとも、数万年にわたって処分場の安定が維持できるかどうかは誰もわからない(いまから数万年前といえば、ネアンデルタール人がいた時代である)。そのため、廃棄物を完全に封印するか、当初の数十年から数百年間は取り出し可能な状態で保管するかは、各国によって方針が異なる。どちらにしても、この地層処分がすでに事業としておこなわれている国は、いまのところない。

 もっとも実現に近いのが、小泉元首相の「原発ゼロ」発言のきっかけになったフィンランドの核廃棄物処分場「オンカロ」である。処分地として決定済みで、2020年頃には操業を開始する予定だ。この場所の岩盤は、過去19億年、大きく動いた形跡がないという。

 これに次ぐのがスウェーデンで、現在、原発のあるフォルスマルクが処分地に選定されていて、決定待ちの状況である。決まれば2029年頃に操業開始となる。この2カ国の処分場は、バルト海を挟んでちょうど向かい合う位置にある。

 いっぽうフランスでは、スペイン国境に近いビュールに核廃棄物地下研究所があり、ここに処分場を建設して、2025年頃に操業を開始する計画が進んでいるが、地元では反対の声が強い。

 アメリカでは、ブッシュ政権の時代にネバダ州ユッカマウンテンに処分場を建設する計画が進んでいたが、地元の反対が根強く、オバマ政権になってこれを撤回した。

 そのほか、スイス、ドイツ、イギリス、カナダ、中国などでも処分場選定の動きが見られるが、具体的な候補地が決まった国は一つもない。日本も同様である。

 ◇日本の最終処分場はどこか

 日本は使用済み核燃料を再処理してプルトニウムとウランを取り出し、繰り返し使用するという核燃料サイクル政策を進めようとしているが、現実には頓挫している。仮にそれが操業にこぎつけたとしても、再処理の過程で出る高レベル放射性廃棄物をどうするかはまったく未解決だ。

 フランスを除くほとんどの国では、再処理をせずに使用済み燃料を高レベル廃棄物として直接処分する方針をとっている。再処理することでコストが減るわけではないことがわかったからだ。

 だが日本は、巨費を投じて始めた事業だけにやめることができずにいる。かといって、核燃料サイクルが機能しているわけではないため、使用済み燃料から取り出したまま使いようのないプルトニウムが現在も増えつづけているのである。そのうえ高レベル廃棄物最終処分場は選定すら進んでおらず決まる見込みはほとんどない。文科省所管の日本原子力研究開発機構が、北海道幌延町と岐阜県瑞浪市に設けた超深地層研究所で地層処分の研究開発を進めてはいるが、すでに地元では研究所周辺が最終処分場とされるのではないか、との懸念の声があがっている。

 中間貯蔵施設を受け入れている青森県は、「最終処分場とはしない」と国に確約させた。しかし、県民のあいだでは、それを反故にされるのではという疑念がたびたび生じている。高レベルではないが、福島県内の除染によって生じた汚染土の処理にも同様の問題がある。政府は12月14日、双葉、大熊、楢葉の3町長と佐藤雄平福島県知事に対して汚染土の中間貯蔵施設の建設受け入れを要請した。難航が予想されるのは、中間貯蔵施設がそのまま最終処分場に転じるのではないかという懸念があるからだ。

 高レベル廃棄物の最終処分場の選定は、これまで、電力会社が中心になって2000年に設立された原子力発電環境整備機構(NUMO)が候補地を公募し、自治体の応募を待つ方法に頼ってきた。地元の説得が最大の難関だからである。応募があれば立地の適性を調査することになるが、その調査段階で地元に年10億円の交付金が入ることになっていたため、いくつかの自治体で立候補をめざす動きがあった。しかし、実際に立候補したのは高知県東洋町(2007年)だけだった。それも、住民の反発は大きく、反対派の町長が当選したことによって撤回された。

 福島第一原発の事故後は、自治体からの立候補はまず望めなくなった。そこで経済産業省は、2013年12月6日に公表した「エネルギー基本計画」原案の中で、NUMOが公募する方式から、国が主導して候補地を選び、地元に提示する方式に改める方針を盛り込んだ。地層や地下水の流れを分析し、安全とされる場所を全国から100カ所程度選び出し、国が調査して、その情報を地元に提供するという手順である。

 経産省はこの基本計画で、原発を「重要なベース電源」と位置づけ、核燃料サイクルの継続も明記した。経産省の諮問機関である総合エネルギー調査会は、「重要なベース電源」の前に「基盤となる」の文言を加え、さらに原発の必要性を強調した。

 ◇廃炉作業は未知との闘い

 もう一つの放射性ごみは、廃炉によって発生するスクラップだ。

 原発は建設から40年で運転を終了し、廃炉にすることを原則としている。事故を起こした福島第一原発廃炉が決まる前、日本で運転停止した原発は5基、そのうち最初に解体されたのは、日本原子力研究開発機構のJPDR炉(茨城県東海村)である。この原発は1963年、日本最初の原子力発電に成功した記念すべき試験炉で(初臨界した10月26日がのちに「原子力の日」となった)、1976年に所期の目的を達して運転終了、10年ほどをかけて解体を完了した。

 もっとも、使用済み燃料さえ取り出せば、一般の原発の解体で生じる廃棄物の9割以上が放射性廃棄物ではなく、法的には一般の廃棄物と同様の処分が可能となる。しかし、周辺住民の意識は複雑で、日本原子力研究開発機構の新型転換炉「ふげん」を廃炉にした際は、汚染されていないコンクリートを漁礁に再利用しようとしたが、風評被害を恐れる地元漁協の反対にあって断念した経緯がある。

 福島第一原発の事故が起きるまで、54基の原発が稼動していた日本では、毎年1基ぐらいずつ運転停止する原子炉が出る計算で、放射性廃棄物の安全な処理など、廃炉技術を磨きながら、海外への技術輸出を含め、これをビジネスとして成立させようとしていた。

 だが、放射性の汚染水にまみれた福島第一原発廃炉作業は、そうした経験がまったく役に立たない、未知との闘いといってよい。東京電力は11月18日、4号機の使用済み核燃料をプールから取り出す作業を開始。2011年12月から始まった廃炉工程表の第2期に入った。このあと、2021年頃から、第3期として正念場の原子炉内に残る溶けた燃料の処理にとりかかる。1〜3号機は4号機よりはるかに放射線量が高いため、作業はさらに困難になる。終了までには早くて30年、遅ければ40年はかかる事業だといわれる。

 福島第一原発廃炉を進めるにあたって、首相を本部長とする政府の原子力災害対策本部の下に「廃炉対策推進会議」や「廃炉・汚染水対策チーム」ができたが、全体を継続して監督する組織がない。経済産業省では、原子力損害賠償支援機構を改組し、東電がおこなう廃炉作業を最終段階まで監督する役割を追加する方針を立てている。改正法案が2014年の通常国会を通れば、新機構が4月に発足、名称は「原子力損害賠償廃炉支援機構」になる見通しだ。(日本の論点編集部)

高い放射線を発する核のごみはガラスとともに融解・固化される。青森県六ケ所村の高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センターには海外から返還されたガラス固化体が貯蔵されている=2013年1月15日、太田誠一撮影(毎日新聞社