辺野古移設強行へ 政府、名護の民意無視
2014年1月21日 朝刊
米軍普天間(ふてんま)飛行場(沖縄県宜野湾(ぎのわん)市)の名護市辺野古(へのこ)への移設問題をめぐり、政府は二十一日にも代替施設の設計などの受注業者を募る入札公告を実施する。三月に業者と契約して調査を始め、二〇一五年春をめどに埋め立て工事に着手したい考えだ。十九日投開票の名護市長選では移設に反対する現職の稲嶺進(いなみねすすむ)氏が、移設推進を掲げた自民推薦の新人候補を破り再選を果たした。選挙結果という民意よりも米国との合意を優先して建設に突き進む安倍政権の姿勢が鮮明になった。 (後藤孝好)
政府は入札公告の実施を名護市に正式に伝えていない。稲嶺氏は再選から一夜明けた二十日、同市の選挙事務所での記者会見で「これだけの反対意見を無視して、強硬に進めるのは地方自治の侵害だ。民主主義でそんなことができるのか」と、政府をけん制した。
これに対して、政府・与党からは稲嶺氏の訴えを無視するような発言が相次いだ。菅義偉(すがよしひで)官房長官は、政府・与党協議会で「選挙は残念だったが、普天間飛行場の辺野古沿岸部への移設は、粛々と手続きを進めていきたい」と強調。計画は変更しないことを確認した。
小野寺五典(いつのり)防衛相も記者団に「地方の選挙なので、辺野古の問題に直結するとは考えていない」と指摘。自民党の石破茂幹事長も「辺野古に移設する新基地の完成を急ぐ」と述べた。
しかし、民意を無視して工事を急げば、沖縄県民の反発が強まるのは間違いない。代替施設を建設するキャンプ・シュワブ周辺で住民が座り込みをするなど抗議行動が活発化し、安倍政権と沖縄の対立は決定的となる。
名護市も資材置き場となる漁港の利用や、作業用車両の道路使用を認めないなど、市長の許認可権で対抗する。稲嶺氏は会見で「移設計画がスムーズに進むとは思わない。県内に(反対の)共鳴、共感の波が起きることを期待したい」と述べた。