日本の核燃料再処理工場の稼働、米国などが懸念


日本の核燃料再処理工場の稼働、米国などが懸念


2013/5/2 ウォール・ストリート・ジャーナル 








By JAY SOLOMON AND MIHO INADA念


Associated Press
六ヶ所村の核燃料再処理工場内にある中央制御室(2012年)
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 【東京】日本は大規模な核燃料再処理工場の操業に向け準備を進めているが、米政府などがそうした動きに懸念を示している。北アジアや中東で核技術、ひいては核兵器の広範な開発競争を招く可能性を危惧しているためだ。

 日本の当局や原子力産業の専門家によると、青森県の再処理工場は核兵器に転用可能なプルトニウムを年間9トン生産できる能力を有している。核爆弾2000発分に相当する量だ。ただし、日本の当局者は再処理は民生利用を目的としたものだと話している。

 日本の当局者によると、2011年の福島第1原発事故で原発の安全性に対する懸念が高まり、日本では現在国内の原発50基のうちわずか2基しか稼働していないため、プルトニウムの利用目的は発電のみに厳しく制限されるという。原爆を投下された世界唯一の国として、日本の当局者は長年、核兵器の使用に反対している。



 六ヶ所村の再処理工場を運営する日本原燃の広報担当、福士泰史氏は、安倍晋三首相率いる自民党政権のもと、停止している原発は新たな安全基準を満たせば再稼働することになるだろうと述べた。また、使用済み核燃料の再利用を目指す国家的なエネルギー政策の一環として、政府は六ヶ所村の再処理工場の稼働を推進しているとも語った。

 だが、北朝鮮が盛んに核実験を行っているほか、周辺地域で領有権をめぐる緊張感が高まっていることから、米韓日の当局者は再処理工場が他国の核開発計画にも広範囲な影響を及ぼす可能性について懸念を表明している。

 米当局は、日本の近隣諸国、特に中国、韓国、台湾が六ヶ所村の動向を慎重に見守っており、独自の核燃料技術の開発、あるいは中国の場合は核燃料技術開発の拡大を検討すべきかどうかの判断に踏み切る可能性があるとみている。

 米シンクタンク「核不拡散政策教育センター」(本部ワシントン)のトップ、ヘンリー・ソコルスキー氏は、「実際問題として、六ヶ所村の再処理工場が稼働すれば、中国は日本ではなく、中国こそが東アジアで最も優位な核保有国であるということを再認識させるため対応に乗り出さざるを得なくなるだろう」と話し、「そうした核をめぐる応酬は泥沼化する可能性がある」と警告した。

そうした懸念を物語っているのが、北朝鮮が2006年に一連の核実験を強行したあと、日韓両国のタカ派の政治家が自国政府に核兵器開発を検討すべきだと要求したことだ。北朝鮮は最近では今年2月に核実験を実施している。

 米国の2つ目の懸念は、日本のプルトニウム備蓄の保安にかかわるものだ。日本は稼働原発を大幅に減らしたことで、ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料を燃やして発電する機会も減少したため、余ったプルトニウムを保管する必要性が出てくる。六ヶ所村の再処理工場は、使用済み核燃料を再処理することで原発から排出される放射性廃棄物を削減するためにも利用されるとみられている。

 六ヶ所村の再処理工場が92年に着工して以来、日本の政府や民間企業は210億ドル(約2兆円)を超える資金を投じてきた。だが日本の当局者によると、操業は技術的・財政的な問題で19回も延期されている。

 核政策に携わる米当局者によると、オバマ政権はそうしたたび重なる遅延の結果、六ヶ所村の再処理工場は計画が棚上げにされたとおおむねみている。こうした見方は、福島第1原発事故やそれを受けて日本政府が原発計画を段階的に大幅縮小する方針を明らかにしたことでますます強まった。

 1期目のオバマ政権で核拡散問題を監督したゲーリーサモア氏は、「オバマ政権にとって(六ヶ所村を)注視する差し迫った必要性はなかった」と述べた。

 だが、12月の総選挙で安倍政権が誕生したことで、日本の原発計画や六ヶ所村の再処理工場の見通しが再び見直されている、と政府や業界関係者は話す。安倍氏原発推進派だが、同氏の事務所は安倍氏六ヶ所村についてはコメントしないと述べた。

 日本は核兵器に転用可能なプルトニウムを約9トン国内で生産可能なウラン濃縮と使用済み燃料再処理能力の両方を有している。当局や業界専門家によると、六ヶ所村の再処理工場が稼働すれば、それだけの量を毎年生産できるようになる。日本にはかつて茨城県東海村に再処理工場があり、07年に閉鎖されるまで約7トンのプルトニウムを生産していた。

 日本の原発はほぼ全てプルトニウムベースの燃料ではなく濃縮ウラン燃料を利用している。原発には使用中の燃料に応じて、いずれも利用可能だ。核兵器も、核兵器に転用可能なレベルにまで濃縮したウランかプルトニウムを使用して生産可能だ。これに対してイランは、ほぼ核兵器に転用可能なレベルのウランを生産しているが、核兵器に転用可能なプルトニウムを生産できる重水炉も開発中だ。

 日米当局者によると、オバマ政権はここ数週間、余剰プルトニウムの保安に関する懸念を日本に伝えているという。

 内閣府日本原子力委員会の鈴木達治郎・委員長代理は4月、ワシントンでオバマ政権当局者と面会し、おおむね次のように伝えたと話した。日本がプルトニウムの利用計画に関する明確な展望のないまま大量のプルトニウム保有することを許してしまえば、その他の世界に対して悪しき前例を作ることになる、と。

 日米当局者によると、鈴木氏が面会したのは、ダニエル・ポネマン米エネルギー省副長官やトーマス・カントリーマン米国務次官補をはじめとするオバマ政権の核拡散問題に関する窓口担当者だという。

 米国務省は、米国は日本に将来原発に依存すべきかどうかについて助言するつもりはないと述べた。だが米当局者は、日本政府は福島第1原発事故を踏まえた効果的な規制機関を設置し、六ヶ所村の再処理工場のような施設を効果的に運営できるようにする必要があると米国は考えていると語った。

 日本原子力委員会日本原燃六ヶ所村の再処理工場は10月に操業開始の見通し、と述べている。だが福島第1原発事故への対応策として設置された原子力規制委員会は、新たな安全基準は12月まで公布されないため、そのスケジュールに間に合わせるのは「不可能」との見方を示した。再処理工場の建設はおおむね完了しており、原子力業界の専門家は数カ月でフル稼働に至る可能性もあるとみている。

 日本原燃の福士氏は、プルトニウム核兵器への転用防止に向け、国際原子力機関IAEA)が再処理工場の操業を密接に監視することになると強調した。

 「日本はIAEAの査察を定期的に受けている。いきなりの査察も受けている。また、プルトニウムの管理状況や利用状況を公表している。これは日本が平和利用を目的にやっていることの証明になる」と福士氏は述べた。

 日本の原子力規制当局は、六ヶ所村の再処理工場の操業開始時期に関してもっと慎重な姿勢をみせている。

 オバマ政権は、六ヶ所村の操業開始がいつになるにせよ、それによって同地域に新たな摩擦の種がもたらされ、他国が核能力の拡大や核能力に対する支配力の強化を検討し始める可能性を危惧している。

 米国産の核燃料や資機材の韓国への輸出継続を可能にする新たな米韓原子力協定の締結は遅れている。

 韓国の交渉担当者は、新たな米韓原子力協定の締結により、自国でウラン濃縮や使用済み燃料の再処理に乗り出すことをともくろんでおり、韓国にとって民生利用を目的とした原発計画の拡大や確保にはそれら技術が極めて重要だと主張した。

 だが米政府はそれを認めず、両国は先週、そうした権利を盛り込まずに現在の協定を2年延長し、その間交渉を継続することで合意した。

 現・元米当局者によると、韓国は、長年のライバルで、かつての植民地支配国でもある日本と自らも同等の能力を持つべきだと考えており、米国にもそう主張している。

 米当局者は、六ヶ所村の再処理工場の操業開始は韓国からのプレッシャーを高めることになり、韓国が日本に倣って独自に核燃料の生産を開始するのを公式に認めるよう一段と迫られる可能性がある、としている。

 クリストファー・ヒル元駐韓米大使「韓国にはできないことを日本はできるという印象を韓国が抱くことになるのであれば、持続可能なコンセプトとは言えない」と語った。

 中国は先週、新たな使用済み核燃料の再処理施設の建設に向け仏原子力大手アレバと契約を交わした。六ヶ所村の再処理工場と同規模で、年間9トンのプルトニウムが生産可能な施設が建設される見込みだ。

 中国政府は同施設は民生利用のみを目的としたものだと述べた。だが、中国は数千もの核弾頭を保有しているとみられている。原子力の専門家は、日本に核兵器に転用可能な核分裂性物質の生産能力を拡大している兆しがみられれば、中国も追随する公算が大きいとみている。