日本の対応の遅れを懸念=危険性高い原発は閉鎖を−シュラーズ・ベルリン自由大教授
ミランダ・シュラーズ ベルリン自由大学教授
【ベルリン時事】東京電力福島第1原発の事故を受け、ドイツは2022年までの脱原発を決めた。一方、日本は30年代の原発稼働ゼロを目指すとした民主党政権の方針の見直しに入る。ドイツ政府に脱原発を提言した諮問機関の委員で、たびたび訪日しているベルリン自由大学のミランダ・シュラーズ教授(環境政策)は「事故から2年になるのに日本で原子力エネルギーの将来が決まらないのは驚きだ」と対応の遅れを懸念する。
教授は、経済産業省や電力会社は原発の再稼働を目指しているが、「大多数の国民は反対している」と指摘。「日本はこの2年間、原発依存度を大幅に減らしながら何とかやってきた。50基の原発すべてを再稼働させる必要はない」と断言する。旧式のほか、活断層や人口密集地、大規模地震の発生予測地域に近い原発の恒久的閉鎖を訴え、「減原発」は節電や再生可能エネルギー開発の動機付けにもなると強調した。
一方で、「全国規模の節電意識が電力需要の大幅な減少につながった」と述べ、事故をきっかけとした日本人の意識改革を評価。「原子力エネルギーについて、賛成派と反対派が自由に議論するようになった」と変化を感じている。
ドイツの総電力に占める再生可能エネルギーの割合は、2000年の6%から12年は22%まで上昇した。教授は「日本が同様にできない理由はない」と力説。「日本は風力、太陽光、地熱、バイオマスの資源が豊富で、大きな可能性を秘めている」と語り、エネルギー転換を急ぐよう呼び掛けた。風力や太陽光の発電施設、送電網の建設には莫大(ばくだい)な費用がかかる。「エネルギー転換は安くはない」と認めつつ、「将来への投資。新技術開発の機会でもある」と訴えた。(2013/03/09-15:35 時事通信)