言葉

「汲む —Y・Yに— 」       茨木のり子

「汲む —Y・Yに— 」 茨木のり子 大人になるというのは すれっからしになることだと 思い込んでいた少女の頃 立居振舞の美しい 発音の正確な 素敵な女のひとと会いました そのひとは私の背のびを見すかしたように なにげない話に言いました 初々(ういうい)…

『人間には回復する力がある。それを信じなきゃいけない』小説家 大江健三郎の言葉

『人間には回復する力がある。それを信じなきゃいけない』小説家 大江健三郎の言葉ㅤㅤ(1)ㅤ日本の子どもは、日本の歴史をまともに学んでゆくだけでいい。そうすれば、まともに育ってゆけます。ㅤ ㅤㅤ(2)ㅤ将来の日本人は誇りが持てないと言っている…

ソローの言葉

ソローの言葉 It is as hard to see one’s self as to look backwards without turning around.振り返らずに後ろを見るのと同じくらい、自分自身を見つめることは難しい。One must maintain a little bit of summer, even in the middle of winter.人間は真…

ウクライナの障害のある同胞(はらから)へ

【連帯と祈り】 ウクライナの障害のある同胞(はらから)へ戦争は、障害者を邪魔ものにする戦争は、障害者を置き去りにする戦争は、優生思想をかきたてる大量の障害者をつくり出す最大の悪、それが戦争朝一番のニュースを恐る恐るキエフの包囲網がまた狭まった…

ユネスコ憲章 (前文)

ユネスコ憲章 (前文) この憲章の当事国政府は、この国民に代わって次のとおり宣言する。 戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない。 相互の風習と生活を知らないことは、人類の歴史を通じて世界の諸人…

死して悠久の大義に生きる

死して悠久の大義に生きる 口では必勝の信念を唱えながら、この段階では、日本の勝利を信じている職業軍人は一人もいなかった。ただ一勝を博してから、和平交渉に入るという、戦略の仮面をかぶった面子の意識に動かされていただけであった。しかも悠久の大義…

「小包」                     信原翠陽

「小包」 信原翠陽 附録のどっさりついた絵本を入れると 中身の貧しい小包は重たくなって 其処から子供達の歓声が聞える様だ ただ生きていると云うだけの 只、親で有ると云うだけの自分だけれど 断ち切る事の出来ない骨肉の愛情と 打ち消す事の出来ない望郷…

「賢治の憂い 賢治の夢」     関川宗英

「賢治の憂い 賢治の夢」 関川宗英 うるはしく猫晴石はひかれどもひとのうれひはせんとすべもなし 歌稿〔A〕 273 今日よりぞ分析はじまる瓦斯の火のしづかに青くこゝろまぎれる 歌稿〔A〕 282 東北の農業学校の実験室で、不安な今を嘆き、まだ見ぬ未来に思い…

「彩花の存在、薄れることはない」 神戸の児童殺傷25年、父が手記

神戸連続児童殺傷事件 被害者の父の手記 「彩花の存在、薄れることはない」 神戸の児童殺傷25年、父が手記遠藤美波2022年3月23日 朝日新聞 1997年に神戸市須磨区で起きた連続児童殺傷事件で、被害者の一人の山下彩花さん(当時10)が亡くなってから23日で25…

咽喉を撫でられる黒猫           石牟礼道子

咽喉を撫でられる黒猫 石牟礼道子 昭和初年、町内に窓のある家は少なかった。たいてい板の引き戸で、がらがらと戸を開ける音がすれば、夜が明けたことになる。その引き戸の内にガラス戸のある家はお店屋さんで、煙草屋、文房具屋、酒屋、美人姉妹で有名な紙…

新しき国の主(あるじ)にゆく人の紅よそほしく立つとふラヂオ

新しき国の主(あるじ)にゆく人の紅よそほしく立つとふラヂオ 土屋文明(昭和七年) 満州を武力侵略した日本の軍部および政治家たちは昭和七年三月「満州国」を中華民国から独立させ、清朝の最後の皇帝溥儀を執政に押し立てた。天津にかくれ住んでいた廃帝…

人間の罪に祈る

人間の罪に祈る 本来、日本人は、草にも樹木にも魚にも魂があると思っていた。私の周りの人たちは、そう思っています。人間だけが特別ではないと。水俣の漁師さんたちは、万物に魂があると思っています。信仰というか、帰依している。水俣の患者さんなんか、…

群衆心理  ルボン

群衆心理 ルボン 群衆の台頭こそは、恐らく西欧文明の最終段階を画し、新社会の出現に先立つあの雑然とした混乱期への復帰を示すものであろう。(中略)群衆は、もっぱら破壊的な力をもって、あたかも衰弱した肉体や死骸の分解を早めるあのバイ菌のように作用…

自らの考えを「私情」と排し、ひたすら周囲に従うのをモラルとするような指導者

「私の個人的意見は反対でありました」。日本が戦争に向かった経緯について、A級戦犯が東京裁判で語った言葉を政治学者の丸山真男が書き残している。 自らの考えを「私情」と排し、ひたすら周囲に従うのをモラルとするような指導者の言動を丸山は「既成事実…

『遙かなノートル・ダム』 森有正 (1967年 筑摩書房)

『遙かなノートル・ダム』 森有正 (1967年 筑摩書房) 「霧の朝」 戦争を人間に対する悪であり、障害である、と公言している連中が、体験の切実さに、読者と共に参ってしまって、悪や障害から結局何かを吸い取り、体験が増大したのを(体験はどんなアホウの…

詩は私のいのちそのもの——脳性麻痺の詩人・堀江菜穂子さんはなぜ詩をつくるのか  2020年01月27日

www.chichi.co.jp 脳性麻痺のため話すことも体を動かすことも思うようにできない堀江菜穂子さん。しかし、堀江さんはベッドに寝たきりの生活を送りながら、これまで筆談により数多くの詩を紡いできました。堀江さんはなぜ詩をつくり続けるのでしょうか。 詩…

(喪の旅)言葉をたどる、妻がどんどん近くなる 歌人・細胞生物学者、永田和宏さん

(喪の旅)言葉をたどる、妻がどんどん近くなる 歌人・細胞生物学者、永田和宏さん 2021/1/13 朝日新聞 竹林が茂る京都市左京区の自宅1階。鎮痛剤のモルヒネがきいて、しばらく眠っていた妻が目を覚ました。2010年8月11日のことだ。 不思議そうに家…

「居場所のない人のために」 柳美里さんが紡ぐ物語

「居場所のない人のために」 柳美里さんが紡ぐ物語2020年12月17日 15時33分 NHK 「居場所のない人のために書く。魂の避難所になりうるような物語を作りたい」アメリカで最も権威のある文学賞「全米図書賞」の翻訳文学部門を受賞した、柳美里さんのことば…

客観的になってきた「三島」

客観的になってきた「三島」 ●山中剛史 自分の人生を作品化 ●平野啓一郎 日本社会の否定理解 2020/12/23 東京新聞 コロナにまみれた一年だったが、今まさに猖獗(しょうけつ)を極めるさなかにあって、まだこの状況を客観的に捉えることはできない。文芸におい…

古在由重 『暗い時代の人々』 森まゆみ 亜紀書房 2017年

古在由重 『暗い時代の人々』 森まゆみ 亜紀書房 2017年 大学卒業後の昭和四年、古在由重は東京女子大学の講師になっていた。当時、思想善導という文部省の基本方針により、女子大にも倫理学の授業が用いられた。古在はこの科目で採用された。社会科学研…

美輪明宏「どんな困難に遭遇しても、絶望することはありません」

美輪明宏「どんな困難に遭遇しても、絶望することはありません」 『婦人公論』12月22日・1月4日号 ◆少しでも気持ちが晴れるように 2021年の鍵を握るのは、間違いなく新型コロナウイルスの治療薬とワクチン開発でしょう。しかし一方で、それらを金儲けや政治…

「夕方の三十分」    黒田三郎

「夕方の三十分」 黒田三郎 コンロから御飯をおろす 卵を割ってかきまぜる 合間にウィスキイをひと口飲む 折紙で赤い鶴を折る ネギを切る 一畳に足りない台所につっ立ったままで 夕方の三十分 僕は腕のいい女中で 酒飲みで オトーチャマ 小さなユリの御機嫌…

古在由重 『暗い時代の人々』 森まゆみ

古在由重 『暗い時代の人々』 森まゆみ 亜紀書房 2017年 大学卒業後の昭和四年、古在由重は東京女子大学の講師になっていた。当時、思想善導という文部省の基本方針により、女子大にも倫理学の授業が用いられた。古在はこの科目で採用された。社会科学研…

三島由紀夫自決50年 保阪正康さんに聞く…人格つくった戦中に回帰 

三島由紀夫自決50年 保阪正康さんに聞く…人格つくった戦中に回帰 2020/11/24 東京新聞 1970年11月、作家三島由紀夫が自ら率いた民兵組織「楯の会」メンバーと東京都新宿区の陸上自衛隊市ケ谷駐屯地(当時、現防衛省)に乱入、自決し、25日で50年を迎える。自決…

北京と同じ青春

「父」 泣きながら駆け登りたる丘の上打たれし頬が風に震いぬ 道浦母都子 北京と同じ青春 つい三か月前、春近い長安街を歩いたが、その長安街が血に染まった。自転車の銀輪が波のように溢れていた道路を、今度は戦車がわが物顔に闊歩した。人民解放軍と呼ば…

鶴見俊輔 60年安保

鶴見俊輔 60年安保 鶴見俊輔は1960年、東京工業大学を辞めた。親交深い中国文学者の竹内好が、文化人集団の請願で岸信介首相と面会、新日米安保条約に抗議したが、その後すぐに衆院委員会で強行採決されたため、岸のもとでは公務員はやれないと東京都立大学…

いのちの政治学~コロナ後の世界を考える「隣人と分かち合う。ともに飢え、ともに祈る。ガンディーの姿が伝えたこと」

imidas.jp 自分たちの大地を取り戻す──スワデーシー 中島 さて、ガンディーが展開した運動には、いくつかキーワードになる言葉がありますが、中でも私たちにとって重要なテーマになると思うのが「スワデーシー」です。 この言葉は、しばしば「自国品愛用運動…