文学

「父に代わって一家を支える」        五木寛之

「父に代わって一家を支える」 五木寛之 (『わが人生の歌がたり』 五木寛之 2007年 角川書店) 母が死んで、いちばん困ったのは、父が茫然自失して、まったく頼りにならなくなってしまったことです。ですから中学一年だった自分が、弟とまだ幼い妹の面倒を…

北條民雄さん 続癩院記録(3)

北條民雄さん 続癩院記録(3)http://terayama2009.blog79.fc2.com/ ハンセン病文学全集4「記録・随筆」P565〜P566を抜粋しました。 まだ明け切らない朝まだき、或はようやく暮れかかった夕方などに、カアン、カアンと鐘の音が院内に響き亘ること…

多摩全生園  北條民雄さん

多摩全生園 北條民雄さんhttp://terayama2009.blog79.fc2.com/ ハンセン病に少し興味のある人なら「北條民雄さん」はご存じかも知れない。それくらいハンセン病文学者の中では著名である。ハンセン病文学全集4(記録・随筆)のP587〜P590を抜粋しま…

「患者看護」  加賀田一さん「いつの日にか帰らん」P77〜P79抜粋

「患者看護」 加賀田一さん「いつの日にか帰らん」P77〜P79抜粋「あめんぼ通信」http://terayama2009.blog79.fc2.com/ その強制労働といわれるのが「患者看護」です。不自由者と重症者の看護、介護が軽症患者の作業になっていました。初めから入所者が…

小学生の作文 最優秀賞「てんしのいもうと」

小学生の作文 最優秀賞「てんしのいもうと」 朝日小学生新聞 「いつもありがとう」作文コンクール てんしのいもうと新潟県 1年 松橋一太 ぼくには、てんしのいもうとがいます。よなか、ぼくは、おとうさんとびょういんのまちあいしつにすわっていました。と…

秋      藤本トシ

秋 藤本トシ 今年もコスモスの季節になった。空はどんなに美しいであろう。深々と澄んだ蒼さを思い浮かべていると、そのなかで・・・あの可憐な花が揺らぐ。コスモスは洒落た洋館の庭にあってもいい。炊煙のなびく藁屋の背戸でも調和する。山村の駅のほとり…

アイヌ神謡集 序

アイヌ神謡集知里幸惠編訳 序 その昔この広い北海道は,私たちの先祖の自由の天地でありました.天真爛漫な稚児の様に,美しい大自然に抱擁されてのんびりと楽しく生活していた彼等は,真に自然の寵児,なんという幸福な人たちであったでしょう. 冬の陸には…

この国に、戦前がひたひたと迫っていることは確か」野坂昭如が死の直前、最後の日記に書き遺したひと言

「この国に、戦前がひたひたと迫っていることは確か」野坂昭如が死の直前、最後の日記に書き遺したひと言2016.01.27. リテラ 昨年末、立て続けに飛び込んできた野坂昭如氏、水木しげる氏の訃報に接し、この国のゆく末を案じた人も多かったはずだ。ご存じの通…

(選べない国で)不惑を前に僕たちは 寄稿、作家・中村文則

(選べない国で)不惑を前に僕たちは 寄稿、作家・中村文則2016年1月8日 朝日新聞 僕の大学入学は一九九六年。既にバブルは崩壊していた。 それまで、僕達(たち)の世代は社会・文化などが発する「夢を持って生きよう」とのメッセージに囲まれ育ってきたよ…

オランド大統領宛ての手紙

オランド大統領宛ての手紙ベルギーの作家ヴァン・レイブルーク フランスのオランド大統領に宛てた公開書簡 ル・モンド紙 2015/11/20 フランス大統領閣下11月14日土曜の午後、あなたがスピーチの中でお使いになった用語の驚くべき軽率な選択に私は凍り付きま…

今日、わたしはお皿を洗わなかった

『今日』 (伊藤比呂美訳)今日、わたしはお皿を洗わなかった ベッドはぐちゃぐちゃ 浸けといたおむつは だんだんくさくなってきた きのうこぼした食べかすが 床の上からわたしを見ている 窓ガラスはよごれすぎてアートみたい 雨が降るまでこのままだとおも…

戦後70年:「国のため死んでいく制度は我慢できぬ」 俳人・金子兜太さんインタビュー

戦後70年:「国のため死んでいく制度は我慢できぬ」 俳人・金子兜太さんインタビュー 毎日新聞 2015年06月23日 ◇トラック島で「捨て石」体験 戦争における生と死の実態とはどのようなものなのか。そこに皇軍の誉れはあったのか。帝国海軍主計将校として、…

世界の最初の一日   長田 弘

世界の最初の一日 長田 弘 水があった。大いなる水の上に、空のひろがりがあった空の下、水の上で、日の光がわらっていた。子供たちのようなわらい声が、漣のように、きらめきながら、水の上を渡っていく。遠ざかってゆくわらい声を、風が追いかけていった。…

樹の伝記        長田 弘

樹の伝記 長田 弘 この場所で生まれた。この場所で そだった。この場所でじぶんで まっすぐ立つことを覚えた。 空が言った。――わたしは いつもきみの頭のすぐ上にいる。―― 最初に日光を集めることを覚えた。 次に雨を集めることも覚えた。 それから風に聴く…

安里有生君の詩 「へいわってすてきだね」

安里有生君の詩 「へいわってすてきだね」 へいわってなにかな。ぼくは、かんがえたよ。おともだちとなかよし。かぞくが、げんき。えがおであそぶ。ねこがわらう。おなかがいっぱい。やぎがのんびりあるいてる。けんかしてもすぐなかなおり。ちょうめいそう…

挨拶    原爆の写真によせて

挨拶 原爆の写真によせて 石垣りん あ、 この焼けただれた顔は 一九四五年八月六日 その時広島にいた人 二五万の焼けただれのひとつ すでに此の世にないもの とはいえ 友よ向き合った互いの顔を も一度見直そう 戦火の後もとどめぬ すこやかな今日の顔 すが…

華厳をめぐる話     司馬遼太郎

華厳をめぐる話 司馬遼太郎 ところで、写真家井上博道氏は、幼いころから上司海雲氏に親しみ、長じては境内を歩きつくし、東大寺の一塵一露まで愛してきた人なのである。 (中略) 青木が編集のしごとをしている窓から、銅ぶきの龍大図書館の緑青の大屋根が…

FROM HAND TO HAND 手から手へ 展

FROM HAND TO HAND 手から手へ 展 絵本作家から子どもたちへ 3.11後のメッセージ 特別展 FROM HAND TO HAND 手から手へ 展 絵本作家から子どもたちへ 3.11後のメッセージ 開催中 会期:2014年7月19日(土)〜8月24日(日) 北海道立文学館 2011年の東日本大震災…

『黒い卵』 栗原貞子

栗原貞子は『黒い卵』(中国文化連盟叢書、1946年8月)に発表しようとしたが、米軍の検閲により全行削除させられた。 のちに彼女は『黒い卵(完全版』(人文書院、1983年)に再録した。 わたしは戦争の残虐を承認しない わたしはどんなに美しく装われた戦争…

あなたが自分自身に与えることができる最高の贈り物の一つは、許すこと。みんなを許すことです

筆洗 2014年5月30日 東京新聞 「人類の一人一人は遺伝子の面では99・9%は同じです。千のうちの九百九十九、私たちは同じ性格と希望、夢を持っています」 ▼国連の潘基文(バンキムン)事務総長は二〇一〇年の秋、こう演説した。当時米国などでは反イスラ…

潮の匂いは。

潮の匂いは。 片平 侑佳(石巻西高等学校 平成25年卒業) 潮の匂いは世界の終わりを連れてきた。僕の故郷はあの日波にさらわれて、今はもうかつての面影をなくしてしまった。引き波とともに僕の中の思い出も、沖のはるか彼方まで持っていかれてしまったようで…

絵本「戦争のつくりかた」

絵本「戦争のつくりかた」 最近は、あまり楽しいニュースを聞かなくなりました。 世界では悲惨な出来事が減るどころか、重苦しい緊張感が、 常にわたしたちの周りを取り巻くようになった気がします。ここ数年、日本も徐々に、しかし大きく変化してきているの…

漱石が生きた「明治の精神」 大江健三郎さんに聞く

漱石が生きた「明治の精神」 大江健三郎さんに聞く聞き手 編集委員・吉村千彰2014年4月19日 朝日新聞 〈夏の暑い盛りに明治天皇が崩御になりました。その時私は明治の精神が天皇に始まって天皇に終ったような気がしました。最も強く明治の影響を受けた私ども…

まどさん 新たな戦争詩 1942年の作品、中島利郎教授が発見

まどさん 新たな戦争詩 1942年の作品、中島利郎教授が発見 〈この戦争は石に囓(かじ)りついても勝たねばならないのだよ〉――詩人まど・みちおさんの「戦争詩」が新たに見つかった。妻に語りかける形で、聖戦完遂をめざす高揚感を静かに歌いあげている。…

米ユダヤ系人権団体が強く非難

米ユダヤ系人権団体が強く非難 2月21日 18時24分 NHKニュース 東京都内の公立図書館で、所蔵する「アンネの日記」や関連する本のページが破られる被害が相次いでいることについて、アメリカのユダヤ系人権団体は20日、声明を発表し、「偏見と憎しみに染ま…

漫画家やなせたかしさん 死去

漫画家やなせたかしさん 死去 10月15日 15時20分 NHKニュース アニメや絵本などで人気の「アンパンマン」のシリーズで知られる漫画家のやなせたかしさんが13日、心不全のため東京都内の病院で亡くなりました。 94歳でした。やなせさんは高知県の出身…

訃報:山崎豊子さん 88歳=作家

訃報:山崎豊子さん 88歳=作家 ◇「白い巨塔」「沈まぬ太陽」 社会性のあるテーマに切り込んだスケールの大きな作風でベストセラーを生み続けた作家、山崎豊子(やまさき・とよこ、本名・杉本豊子=すぎもと・とよこ)さんが、29日、心不全のため死去した…

いつ爆ぜむ青白き光を深く秘め原子炉六基の白亜列なる  佐藤祐禎 

いつ爆ぜむ青白き光を深く秘め原子炉六基の白亜列なる 小火災など告げられず原発の事故にも怠惰になりゆく町か 原発に勤むる一人また逝きぬ病名今度も不明なるまま 原発が安全ならば都会地になぜ作らぬとわれら言ひたき 佐藤祐禎 歌集『青白き光』

三國連太郎と軍隊

三國連太郎と軍隊 2013年4月22日 水島朝穂 - 先週14日、俳優の三國連太郎さんが亡くなった。90歳だった。圧倒的な存在感があり、映画でもテレビドラマでも、役柄にピタリとはまったとき、他を寄せつけない迫力があった。後半生は『釣りバカ日誌』(栗山富夫…

震災後、「言葉」は変わったのか 谷川俊太郎さんから返信

特集ワイド:震災後、「言葉」は変わったのか 谷川俊太郎さんから返信 毎日新聞 2013年05月02日 東京夕刊 ◇沈黙は深まり、よみがえる 東日本大震災の後、言葉は変わったのだろうか−−。この2年、そんな疑問が折々に湧いた。今も答えを探している。【小国綾子】…