安倍元首相の国葬は、日本のイメージを悪化させただけ newsweekjapan

パリのカフェのテラスから〜 フランスって、ホントはこんなところですRIKAママ|フランス
2022/09/30

https://www.newsweekjapan.jp/worldvoice/rikamama/2022/09/post-35.php

 

安倍元首相の国葬は、日本のイメージを悪化させただけ

日本での安倍元総理の国葬にまつわる論争が激化していた中、私は、フランスではこの国葬がどのように報道されるのかを注目していました。ひととおりのフランスの報道機関による、この日本の国葬についての報道は、どれも似たり寄ったりで、国葬儀そのものよりも、その背景に焦点が当てられ、この国葬に対して国民の約6割が反対していること、またこの意見は日本では珍しい数千人単位のデモが起こり続けてきたこと、国葬儀の1週間ほど前には抗議のために首相官邸前でガソリンを被って火をつける人までいたこと、1,200万ユーロという税金がつぎ込まれたこと、日本政府が見込んでいた海外からの要人の弔問客もG7の現職の首脳は現れなかったこと、これにつれて、現首相の支持率が急落したことなどに言及しています。つまり、ポジティブな要素はまるでありません。

日本の国葬翌日の仏紙ル・モンドでは、「7月8日に選挙演説中に暗殺された安倍元首相の国葬は、国民の強い不満を呼び起こし、岸田現首相の支持率を著しく低下させた。誰からも何の疑問を抱くこともなく行われた世界的な影響力を持ったエリザベス女王国葬は、イギリス国内だけでなく世界中の人々の感動を呼び起こし、この日本の国葬とのコントラストを際立たせた」と書いています。

 

安倍元首相暗殺から国葬までのフランスでの報道の経緯
安倍元総理が暗殺された日は、その当日からフランスでも速報が流され、日本から生中継の映像が流され、その衝撃の大きさは相当なものでした。安倍元首相は、近来の日本の首相の中では海外でも抜群に知名度があり、首相を退いた後もその発言には、現職の首相以上に注目されていた感じでした。しかも、それが選挙演説中の、世界一安全なはずの日本での銃による暗殺という事件はかなりセンセーショナルでもあり、マクロン大統領をはじめ、世界各国の首脳が弔意を示すメッセージを次々と発表している様子などが伝えられていました。

この事件直後の報道では、民主主義への攻撃は許されないという正論も手伝って、「日出ずる国は、日本の近代史における重要な家系の純粋な家系図を失い、日本の歴史に長い歴史を持つ日本の政府首脳が初めて暗殺された暗い日として、永遠に刻まれることになるであろう」、彼の出自についても「19世紀以降に大きな影響力を持った安倍、岸、佐藤という苗字を持つ家系であり、真の日本の王朝物語、安倍氏はその生涯を武勇伝として残した」と神格化されたような報道ぶりでした。

しかし、それからまもなく、事件の背景にある真相(統一教会との繋がり)が明らかになるにつれ、彼の評価が一転するだけでなく、この事件の真相に関わる重大な問題を選挙が終わるまで曖昧にして伏せてしまう日本の政府と警察、マスコミについての辛辣な批判が始まりました。「投票日までの48時間、日本の大手メディアは膨大な人的・物的資源(全国紙5社で9,355人の記者)を導入して、事件の情報収集に当たっており、事件現場にはヘリコプターが飛ばされ、事件現場は模型で再現され、きめ細かく検証されているかのごとく報道している一方で、堕落した日本のマスコミは、これだけの人的・物的資源を導入が単なる水増しされた動員、導入であるかを物語るかのごとく、愚かしいニュースを流し、驚くことに安倍晋三が殺害された翌日、日本の大手5大新聞は全て同じ記事を一面トップで掲載し、書体の大きさも含めて一言一句違わないのは、彼らの共犯関係を裏付けている。もはや日本の主要メディアは機能していない」と書かれていました。

そして、その後は、安倍晋三氏と統一教会の問題、日本での統一教会の被害について、また100人以上の現職の国会議員(その大半が自民党)が統一教会との関わりがあるという事実などが着々とフランスでも報道されていました。仏フィガロ紙では、「日本における統一教会の驚異的な影響力」と題して、「数千人の統一教会信者の前で晴れ晴れとスピーチする衆議院副議長は、日本で非難を浴び続けている宗教団体の集会に参加したということで、当然、本来ならば、彼の政治生命は絶たれるはずだが、安倍晋三の下ではそのような付き合いは無害どころか、高く評価されていた・・」と報道しています。

事件直後のフランスのツイッターのトレンド1位は「Shinzo Abe」でしたが、それからまもなくすると、「Shinzo Abe」と検索すると「Shinzo Abe secte moon」(安倍晋三 統一教会)と出てくるようになりました。

次の段階でこの話題に注目が集まり始めたのは、現在の民主主義体制では国葬は規定されておらず、この点に関する法的根拠はないにもかかわらず、国会も通さずに岸田首相が国葬を行う決断をしたことや、そのことに反発する国民の声が大きくなり、7月末に行われた世論調査で53%以上の国民が反対しているという段階で、岸田内閣が支持率の急激な低下に押されて、9月に行われるはずだった閣僚の入れ替えを早めたものの、依然として不評をかっていることなどが伝えられていました。

9月に入り、「マクロン大統領は安倍元首相の国葬には参加できない(しない)」と返答したというニュースが一瞬、流れましたが、その時には、上記した内容の報道がさんざんフランスでもなされていたので、至極、当然の成り行きであると思われていました。国葬を機に弔問外交を行うと見積もっていた日本政府にとっては大誤算で、結果として、G7(主要7カ国)の現職の首脳は一人も参加しないものとなりました。

 

極め付けのエリザベス女王国葬
そして、強硬に国葬を開催しようとしている日本政府にとっては、これでもかというタイミングでエリザベス女王がご逝去され、フランスでは、その国葬までの1週間ほど、まるで自分の国の女王か?と思われるほどのエリザベス女王・イギリス王室フィーバーが巻き起こり、非のうちどころのない国葬の様子を密着で報道しました。安倍元首相が暗殺された時には、エリザベス女王からの弔文が送られたというのに、このとんでもない顛末には、唖然とさせられるばかりです。もはや比較の対象にするのが失礼なレベルですが、もちろんエリザベス女王国葬に関しては、きちんと国会で決議され、反対する国民どころか、女王の棺と対面するための一般の弔問客の列が4日半も途切れることなく行列したのは25万人、国葬当日に沿道に駆けつけた人約10万人、全世界からの現職首脳2,000人が参列、全世界で40億人がこの国葬の模様を視聴したと言われています。

そんな今世紀最大のため息が出るほど美しいイギリスの国葬の後の日本の国葬は、そのお粗末さどころか、日本の粗を露呈する以外のなにものでもなく、もはや報道に値するのはその国葬儀自体よりも、そのことによる日本国民の分断やスキャンダルでしかありえなくなったのです。

 

スキャンダルの深掘りへ
この日本の国葬儀と国民の反発、統一教会問題から、さらに、フランスのメディアは、統一教会以外の安倍氏に対する問題追求、批判はさらに厳しくなりました。「9年近くも政権を維持したのは記録的な長さであり、国際的にも多くの功績を残したが、内政面ではもっと複雑な問題を抱えている。安倍晋三は、その超保守的な姿勢、悪化したナショナリズム、労働者よりも大企業にはるかに有利な経済政策、そして彼の職務を汚す政治・金融スキャンダルなどで多くの批判を浴びており、分裂的な人物である。彼の首相引退も世間的には、健康上の理由ということになっているが、実際には、政治・金融スキャンダルによるものであった」など、当初は「真の日本の王朝物語、安倍氏はその生涯を武勇伝として残した」とまで言われた安倍元首相は、国葬によって、より過去のスキャンダルに注目され、それが印象づけられることとなりました。

そして、それは、安倍元首相だけには、留まらず、この国民の60%以上が反対する国葬を民主的な協議も行わずに強行した現岸田首相への非難にも繋がっています。仏経済紙レゼコー紙は、「Fumio Kishida Mr Nobody」と題して、「日本の首相は国葬で自分の野望の喪失を悼むことになるだろう」「白い花壇の前で喪に服すとき、首相は自民党が自分に託した期待も喪うことになる」「保守派の仲間たちが岸田文雄を指名したのは、わずか1年前のことだったが、ほぼ企業だけが儲かったアベノミクスに対する改革もこの気弱なリーダーは、事実上、すべての改革プロジェクトを放棄している。そのため、彼の人気は野望とともに崩れてしまった。そこへ来て、安倍晋三の暗殺で明るみに出た、多くの自民党議員と統一教会とのつながりのツケも回ってきた。それに輪をかけるようにこの過半数を超える世論を無視し、野党の説得もできずに強硬した国葬は、さらに彼の支持率を奪った」とかなり辛辣に述べています。

だいたい、国民の半数以上が反対していることを強行的に行うということはフランスでは考えられないことです。フランス政府がこのようなことを強行すれば、巻き起こるデモや氾濫は日本の比ではありませんから、フランス政府は非常に世論に対して敏感に対応します。同意を得られなければ、きっと何としてでも説得しようと試みるであろうし、それを無視して強行するなどということは、それこそ民主主義国として許されないと国民は大荒れに荒れることでしょう。今回の日本の国葬国葬儀)の開催は、フランス人には理解できないことだったのです。

こうして、フランスでの安倍元首相の暗殺事件から国葬までの報道の経緯を辿っていくと、この事件をきっかけに、どんどん日本へのネガティブイメージが膨らんでいったように思います。安倍元総理を全否定するつもりはありませんが、その後の問題処理対応一つ一つで、みるみる日本のイメージを悪化させてしまった気がして残念でなりません。

 

Profile 著者プロフィール
RIKAママ
フランスって、どうしようもない・・と、日々感じながら、どこかに魅力も感じつつ生活している日本人女性。日本で約10年、フランスで17年勤務の後、現在フリー。フランス人とのハーフの娘(1人)を持つママ。東京都出身。

ブログ:「海外で暮らしてみれば・・」

Twitter:@OoieR

 

ロシアによる「併合」は違法であり無効 宮内靖彦・国学院大教授

ロシアによる「併合」は違法であり無効 宮内靖彦・国学院大教授

2022/9/30 朝日新聞

 

 ロシアのプーチン大統領は9月30日、軍事侵攻で占領したウクライナ東部、南部の支配地を自国に併合すると一方的に宣言しました。この「併合」は国際法の見地から、どうみればいいのでしょうか。ロシアが「併合」を宣言した領土をウクライナが攻撃した場合、どうみなされるのでしょうか。国際法が専門の国学院大学の宮内靖彦教授に聞きました。

 ――プーチン氏がウクライナ東部、南部の4州の併合を宣言しました。これらの併合について、国際法的にはどうみればいいのでしょうか。

 ロシアによるウクライナ4州の併合が合法か否かは、事がロシアの武力行使に端を発しているので、武力行使そのものが合法かどうかにかかっています。

 ロシアによる武力行使は、国連憲章2条4項で定められた武力の行使を禁止する原則に正面から抵触しています。国連総会の「侵略の定義に関する決議」がありますが、そこでは違法な武力行使の結果として併合した場合は、侵略とみなされることが確認されています。

 国際司法裁判所の判決に従っても、武力攻撃と解釈できます。

 そう考えると、ロシアの行動は違法な武力行使であり、その結果の併合も違法です。併合宣言も無効ということになります。ウクライナや国際社会は違法であることを前提に動き、併合を承認しないでしょう。

 国連は総会で併合を承認しないよう求める決議を採択することができます。ただ、国連が動かなくても、武力不行使の原則は、強行規範(国際法において決して犯してはならないルール)なので、どの国も、その違反の結果生じた状態を承認してはならないことが求められています。

 ――併合が宣言された地域をウクライナが攻撃した場合、その行為は合法なのでしょうか? ウクライナに武器を供与して軍事支援する米国などの行為はどうみればいいのでしょうか?

 ウクライナとしては侵略を受け続けているので、自衛権を行使して取り返すということになります。また、ウクライナの反撃行為が自衛権として正当である限り、米国などが武器を供与して支援しても、合法行為への協力ですから、合法だと言えると思います。

 武器の合法性については、国際法の分野としての武力紛争法で規制されています。同法において合法な武器を使い、合法な方法で戦えば、武力紛争法に違反しません。

 ――ロシアの一連の行為による国際社会への影響をどう見ますか?

 ロシアは国連安全保障理事会常任理事国であるにもかかわらず、国連の集団安全保障体制を機能麻痺(まひ)にさせています。拒否権行使という手続き的な問題だけでなく、自国の国益のために国連体制の根幹である武力不行使の原則を自らが否定しています。国際社会が満州事変以後の戦前日本の行為を否認して成立させた、国連体制そのものへの挑戦だと言えます。

 国連が動かないときに、国際社会は武力行使の禁止をどのように守らせるのかが問われています。武力行使をしてはならないというルールを守らせる覚悟を持たなければならないと思います。

 ウクライナの問題に対処するためには、ロシアの武力行使による結果を認めないことを前提に、ウクライナ戦争後、武力行使を禁止するルールを遵守(じゅんしゅ)させるために、国際社会の力をいかに結集するかを考えなければなりません。人類の知恵を結集した工夫が必要になっていると思います。(聞き手・丹内敦子)

 

映画『#主戦場』ご報告 今年1月の一審につづき、控訴審でも原告らの訴えをすベて棄却

映画『#主戦場』ご報告 今年1月の一審につづき、控訴審でも原告らの訴えをすベて棄却する判決が下されましたことをご報告するとともに、これまでご支援くださったみなさま、弁護団のみなさまに、あらためて心より感謝を申し上げます。 合同会社 東風一同 また本作の配信開始をお伝えします。
 
 
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「汲む —Y・Yに— 」       茨木のり子

  「汲む —Y・Yに— 」       茨木のり子

 

 大人になるというのは

 すれっからしになることだと

 思い込んでいた少女の頃

 立居振舞の美しい

 発音の正確な

 素敵な女のひとと会いました

 

 そのひとは私の背のびを見すかしたように

 なにげない話に言いました

 

 初々(ういうい)しさが大切なの

 人に対しても世の中に対しても

 人を人とも思わなくなったとき

 堕落が始まるのね 堕ちてゆくのを

 隠そうとしても 隠せなくなった人を何人も見ました

 

 私はどきんとし

 そして深く悟りました

 

 大人になってもどきまぎしたっていいんだな

 ぎこちない挨拶 醜く赤くなる

 失語症 なめらかでないしぐさ

 子供の悪態にさえ傷ついてしまう

 頼りない生牡蠣(なまがき)のような感受性

 それらを鍛える必要は少しもなかったのだな

 年老いても咲きたての薔薇 柔らかく

 外にむかってひらかれるのこそ難しい

 あらゆる仕事

 すべてのいい仕事の核には

 震える弱いアンテナが隠されている きっと……

 

 わたくしもかつてのあの人と同じくらいの年になりました

 たちかえり

 今もときどきその意味を

 ひっそり汲むことがあるのです   

 

      (詩集『おんなのことば』童話屋・1994年刊)

 

今回の国葬は歴史の審判に耐えられない

今回の国葬は歴史の審判に耐えられない  保阪正康

AERA 2022年9月26日号


今回の国葬は内閣による私物化だと思っています。国葬の決定には行政府のみならず、立法府での議論などを通じた国家的な意思確認が最低限必要です。そうした手続きを経なかったことは、私は安倍晋三元首相の支持者ではありませんが、安倍さんに対しても失礼だなと感じます。安倍さんが国葬に値するかどうかは次の問題です。岸田文雄首相は国葬を私物化したという一点で議会政治に汚点を残しました。ほかにも、いくつもの矛盾や歴史への説明不足が目に付きます。国民の間にも、「何かおかしいぞ」という感覚が広がり、支持率低下につながっているのだと思います。
国葬は本来、確たる業績評価を行った上で検討されるべき国策です。例えば、吉田茂の門弟たちは彼の業績を後世に残そうと、吉田の政界引退後、池田勇人佐藤栄作らを相手に語った『回想十年』という本を出版しています。これは立派な歴史的文献です。首相として吉田の国葬を決定した佐藤の判断は、こうした取り組みや意識の帰結と捉えることが可能です。
一方、岸田さんは安倍さんの業績としっかり向き合っているようには思えません。それでいきなり国葬をやるのは「業績評価なしの国葬」です。だからこそ、私は「私物化」という言葉を使うわけです。私物化は非歴史化、反歴史化とも言えます。
■説得力ある業績なし
山本、吉田に継いで安倍さんを国葬にするというのであれば、戦後77年をシンボライズするような安倍さんの業績が不可欠です。首相在任期間が長く、大衆の人気があったというのは「その時代の雰囲気」を表しているにすぎません。安倍さんには50年後の人たちに説得力のある形で提示できるような業績が浮かびません。
安倍さんが首相在任中に行ったことは、憲法改正を声高に訴えたり、集団的自衛権の行使容認に踏み切ったり、内閣法制局長官を自分に都合の良い人物に入れ替えて法解釈を変える、といったことです。つまり、安倍さんがやろうとしたことは、日本が現代史の中で培ってきた政治の枠組みを壊すことです。
岸田政権の政策の骨格が依然として見えないなか、国葬実施の判断は岸田首相の政治に対する向き合い方を映し出した面もありました。宏池会自民党の中でも政治的なバランスの取れた派閥集団だと思い、私は個人的にかなり期待していました。実際、それだけの人材もかつてはいました。宏池会自民党の中に存在することで、与党が一方向に傾かない役割を果たしてきたと思います。その宏池会を引き継ぐ岸田さんには宏池会のカラーや政策の幅は全く出てこない。というより、対極にいると受け止められるのが今回の国葬の発想だと感じています。
岸田さんは状況の中でしか生きられない政治家です。自分なりの思想を掲げて集団を引っ張っていく、ということができない人です。そういう人物がリーダーを務める危険性は、状況を自分で作っていない分、無責任になることです。岸田さんは状況に対して常に受け身です。思想の裏打ちもなければ、立ち位置も明確ではない。だから状況に流される。この人は一体、何を考えているんだ、となる。国葬を決定した原点にあるのは、そういう岸田さん個人の特質だと思います。
もう一つ、言っておきたいのは靖国神社の思想との関連です。靖国神社というのは、全てをはしょって言えば、国家主義的な思想のもとで行う慰霊の社です。靖国神社が1年で最も注目を集める終戦記念日を前に、9月に行う国葬を岸田さんが事件後早々、7月に発表した背景には、この「靖国」の存在を意識した面があったからだ、と考えています。
安倍さん自身、戦後社会における靖国の思想を継いでいる人だと思います。そういう人物を国葬にするということは、岸田さんが間接的に8月15日に靖国神社に参拝するのと同様の効果を持ちます。つまり、岸田さんは安倍さんが持っていた保守の支持層に媚びへつらうことにより、自身の政治的基盤の強化につなげようとした。少なくともそうした潜在心理が岸田さんの中にあった、と私は見ています。銃撃事件が春先に起きていれば、果たして岸田さんはこんなに早く国葬の決定を急いだでしょうか。
自らの思想を持たない状況主義者が怖いのはそこなんです。戦後77年、日本はとうとう存在の核のない内閣を抱えるに至ったんだな、という感を強くしました。
さらにもう一つ、留意しないといけないのは、国葬天皇の関係です。今回の国葬は「憲法上の象徴天皇の国事行為はどうあるべきか」という問題の本質に迫る局面でもあります。
天皇は内閣から国葬への出席を求められるでしょう。そのとき、天皇家が「こうした国葬の類には、どんな人の国葬であれ、距離を置きたい」という自由な意思を貫けるかといえば、そんなことはできない、と宮内庁は考えるでしょう。となると、どうなるか。天皇が出席するかどうかは、軽々に口をはさめませんが、天皇家の誰かが出席することになります。私はいま、宮中で相当なエネルギーを費やして議論と調整が行われているんじゃないか、と推察しています。こうした複雑な課題も含め、岸田さんはあまり深く考えずに国葬の実施を決めてしまったのではないでしょうか。
いまの憲法平和憲法ではありません。非軍事憲法だと私は考えています。これを本当の意味で平和憲法にするには絶え間ない平和への努力が必要です。そういう努力もしないで表面だけ「平和憲法」という美辞麗句で飾っても、若い世代には思考停止の上に据え置かれた「保守化したもの」としか映りません。安倍さんはそのような日本社会が欠落させてきたものを否定することで、内実を伴わない見せかけの斬新さをアピールするブームに乗っかっただけの政治家です。
私たちには今の時代に生きることと、歴史の中に生きる2つの役割があります。歴史の中に生きるというのは、先行世代の教訓を次世代に伝えていく役割です。私たちはこの努力を怠っていないか。次世代の人が私たちを見て、受け継ぐに値するものがどれくらいあると考えるでしょうか。今回の国葬は歴史の審判に耐えられないと考えています。

 

国葬反対、反戦、脱原発にLGBTQ差別抗議…デモのうねり今も 若者に当事者意識 議会の外から政治変える 2022年9月26日

国葬反対、反戦脱原発にLGBTQ差別抗議…デモのうねり今も 若者に当事者意識 議会の外から政治変える


2022年9月26日 東京新聞

 

 安倍晋三元首相の国葬閣議決定された7月以降、東京をはじめ各地で、国葬に抗議するデモや集会が開かれている。新型コロナウイルス禍で外出自粛や密回避を求められ、交流サイト(SNS)などインターネット上での意思表示が盛んになった今も、実際に集まる従来型のデモは健在だ。ただ参加者は、比較的高齢の人たちが目立つ。
 一方、若者が中心となる動きもあった。性的少数者(LGBTQ)への差別に反対し、東京・永田町の自民党本部前で行われた7月のデモは、20代の人たちが呼び掛けた。中心となった海外出身の若者は「選挙権のない自分が社会をよくするには、デモしかない」と意義を強調する。
 昨年10月の衆院選と今年7月の参院選を経て、岸田文雄政権は2025年まで大型の国政選挙がない「黄金の3年」を手にしたという見方もある。デモや集会を通じて為政者に声を届けつつ、こうした運動を将来世代につなげる重要性を指摘する識者も少なくない。

◆「無関心でいいはずない」「何かが起きていると気付くきっかけに」
 「初めて参加したが、人が多くてびっくり。でも同世代の人がいない。情けない」。19日、代々木公園(東京都渋谷区)と周辺で行われた国葬中止などを求める集会とデモ。台風の影響による悪天候にもかかわらず1万3000人(主催者発表)が参加したが、若者の姿はまばらで、千葉県流山市の男子大学生(23)はさみしそうな表情を浮かべた。
 新型コロナウイルスの流行が始まった2年ほど前、行動自粛を求めつつ補償も検査もきちんとしようとしない状況に不満で「政治はひどい」と感じたという。
 だが、友人と政治の話をしても「はぐらかされる感じ」という。「忙しくて政治に目が向かないのは分かるが、これから何十年と生きていく私たちの世代がこういう問題に無関心でいいはずがない」と話す。
 それ以降、交流サイト(SNS)で考えを発信してきたが、収まらない。「こういう場所に来て、訴えよう」と思ったという。
 一緒に参加した宇都宮市の男子大学生(21)もデモは初めて。渋谷駅周辺を行進していると、若者の冷たい視線が気になり、ばかにするような言葉を浴びせる若者グループもいたという。
 自分でも「旗を掲げて、表に出てきて、強い言葉で『反対』を表明する。言葉は悪いが昭和の闘い」と思う。それでも「こんなに多くの人が反対しているんだ、何かが起きているんだと気付いてもらうきっかけにはなる」と感じた。27日の国会正門前の集会にも参加するつもりだ。(加藤益丈)

◆仲間と連帯 政治はすぐには変わらないが、つながりは生まれる
 「LGBTQは病気ではありません」
 参院選さなかの7月4日夜、東京・永田町の自民党本部前。会社員の「アンドロメダ」さん(28)=活動名、東京都=はマイクを握り、訴えた。同党議員が多数参加する「神道政治連盟国会議員懇談会」の会合で、同性愛を「後天的な精神の障害、または依存症」などと表現した冊子が配られたことに抗議するデモだった。
 「差別をやめろ」などと書いたプラカードを手にした人たちが、歩道上に長い列を作った。SNSの中継を通じ参加した人もいた。デモを初めて企画したアンドロメダさんは「怒りや悲しみの発散と同時に『こんなに仲間がいる』と連帯を示す意味もあった」と話す。
 メキシコ生まれのカナダ育ち。日本の大学に留学後、日本企業に就職した。「日本は法的にはLGBTQに差別的。選挙の投票権がない自分が、この社会を良くしたいと考えた時、デモしかなかった」という。
 2018年夏、LGBTQを「『生産性』がない」と表現した杉田水脈みお衆院議員への抗議デモに参加。虹色の旗がはためく様子を見て「こんなに怒っている人がいる。日本でもデモはできる」と思ったという。
 その経験が今回につながった。ネットで冊子の差別的な表現を知り「間違った情報で絶望する人がいる。『ダメだ』と言わないと、差別を許すことになる」と思った。SNSに「デモやろうよ」と記すと、友人らが手伝うと名乗り出た。
 当日。登壇者が涙ながらにプライベートな話や思いを伝えた。その一人、トランスジェンダー当事者の浅沼智也さん(33)は「若い人や外国ルーツの人など初めてデモに参加した人が多かったと思う。自分たちの人権問題と考える人が増えていると感じる」と語る。 
 アンドロメダさんも手応えを感じている。「政治はすぐには変わらない。でも、数年前のデモに希望を見いだした自分のような人間が数年後、デモをするかもしれない。つながりは生まれると思う」(奥野斐)

 

<社説>原子力規制委10年 独立・透明性の堅持を 2022年9月24日

<社説>原子力規制委10年 独立・透明性の堅持を
2022年9月24日 琉球新報

 

 東京電力福島第1原発事故の反省を踏まえ、国の原子力規制委員会が発足してから10年を迎えた。

 岸田政権が原発の積極活用に大きくかじを切る中、事故の教訓である「規制の独立」が圧力にさらされている。規制委は発足の理念を忘れず、中立性と透明性を堅持してもらいたい。
 原発事故当時、規制を行う原子力安全・保安院は、原発を推進する資源エネルギー庁と同じ経済産業省にあった。保安院原発を推進したい電力業界などに取り込まれたことも原発事故の一因とされた。
 そこで規制する側を経産省から切り離し、環境省原子力規制委員会を設置した。規制委は独立性の高い「三条委員会」とした。
 規制委は、安全対策を強化した原発の新規制基準を策定した。地震津波への備えや、炉心溶融などの過酷事故対策を大幅に強化。テロや航空機の衝突まで想定している。厳格な姿勢で原発の審査などに臨み、審査は原則公開で透明性を確保した。
 政治に左右されず、安全確保に特化した判断が、結果的に核燃料サイクル政策の中核施設である高速増殖原型炉「もんじゅ」を廃炉に追い込んだ。テロ対策の不備が相次いで発覚した東電柏崎刈羽原発に対し、核燃料の移動を禁じる事実上の運転禁止命令も出した。こうした判断は評価できるが、福島第1原発の「処理水」海洋放出計画を認可したことは疑問である。
 一方、ここにきて規制委の独立性が揺らぐ事態が起きている。岸田文雄首相は、次世代型原発の建設を検討する方針を公表した。原発事故以降、原発の新増設やリプレース(建て替え)は想定しないとした従来のエネルギー政策の基本方針の転換となる。
 運転期間を原則40年、最大60年と定めたルールも、審査で長期停止していた期間は除外することを検討する。「可能な限り原発依存度を低減する」という事故以降の方針からの大転換だ。将来にかかわる基本政策を国会にも諮らず次々と転換させるやり方は、民主主義の手続きをないがしろにしている。
 来夏以降には、既に新規制基準の審査に合格している原発7基を追加で再稼働させることも目指す。この中には、規制委が事実上の運転禁止命令を出した東電柏崎刈羽原発も含まれる。規制委の領域への政治介入は言語道断だ。
 規制委の内部でも変化が生じている。今年、規制委の事務局である原子力規制庁のトップ3のポストを、原発を推進してきた経産省の出身者が初めて独占した。人事を通じて「三条委員会」に介入することがあってはならない。
 ロシアのウクライナ侵攻に伴う燃料価格高騰、電力逼迫(ひっぱく)を背景に、原発復権の動きが強まる。規制委は原発事故の教訓から誕生した。規制委の独立性を骨抜きにすることは許されない。